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「ホタル族」に住民の厳しい目 喫煙者には言い分も… 共存は可能か?

ニュースカテゴリ:暮らしの健康

「ホタル族」に住民の厳しい目 喫煙者には言い分も… 共存は可能か?

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 家族に喫煙を嫌われ、しぶしぶマンションなど集合住宅のベランダで喫煙する人たちを「ホタル族」と呼んで“同情”したのは、今は昔。受動喫煙の害が広く知られるようになったことで、隣や上下の階に煙が流れるベランダでの喫煙に対し厳しい目が向けられている。(平沢裕子)

 泣き寝入りも

 「たばこの煙についてのお願い」-。東京都江東区のマンションで先月、ベランダでの喫煙への注意を促すポスターが掲示された。同マンションの理事長(58)は「複数の居住者からベランダ喫煙への苦情が寄せられ、理事会に諮ったところ『私も煙が嫌でずっとがまんしていた』という声が次々に上がった。一方、吸いたいという声はゼロ。もともと廊下など共用部分は禁煙なので、ベランダでの禁煙を改めて啓発することにした」と説明する。

 ベランダ喫煙に対して、「洗濯物に臭いがつく」「たばこの煙が臭くて窓を開けられない」「受動喫煙の影響が心配」などの苦情はよく聞く。ベランダは、部屋の居住者が洗濯物を干したり、家庭菜園をしたりできるので、好き勝手に使えると誤解している人も多いが、実際は共用部分だ。

 大手マンション管理会社の広報担当者は「今は多くのマンションが共用部分は禁煙にしている。ホタル族への苦情が最近は減ってきており、ベランダでの禁煙はマナーとして認知されてきたようだ」と話す。

 しかし、受動喫煙被害に詳しい岡本光樹弁護士は「ベランダ喫煙の煙を苦痛に感じても、トラブルを恐れて泣き寝入りしているケースもある」と指摘する。

 一方、喫煙者からは「屋外で吸ったたばこの煙はすぐに拡散する」「子供の声がうるさいのを我慢している。お互いさまでは」などの声も上がる。

 換気扇の煙は?

 ベランダがだめなら、室内の換気扇の下で吸えばいいのではないかと考える人もいるかもしれない。しかし、岡本弁護士は「これまでの判例から、外に煙が流れる換気扇の下で吸うのも、苦痛に感じるという人がいる場合には認められないこともある」とする。

 ただ、苦痛に感じる人がいる場合がだめだと言うのなら、魚を焼く臭いや子供の声に苦痛を訴える人がいればだめということになる。

 この疑問に対し、日本学術会議の要望書「脱タバコ社会の実現に向けて」(平成20年)を取りまとめた東京大学の唐木英明名誉教授は「他人に苦痛を与えているかどうかは、健康に被害を与えているかどうかで考えるべきだ」と指摘、「受動喫煙が健康被害を引き起こすことは世界保健機関(WHO)が2004年に科学的根拠をもって示している。換気扇からの煙も健康への影響は無視できない」とする。

 では、喫煙者はどこで吸えばいいのか。

 唐木名誉教授は「他人に迷惑をかけない場所なら吸っても構わない。ただし、たばこの煙によって嫌な思いをする人がいないか、喫煙者は常に注意を払う義務がある」。

 NPO法人「マンション管理支援協議会」の川上美知代事務局長は「集団で生活を営むマンションでは、迷惑と思われないよう互いに気を使うべきだ。マンションによって事情は異なるので、どういうルールがいいのか住民同士でよく話し合うことが大切」と話している。

 ■喫煙者に支払い命令

 受動喫煙をめぐっては訴訟にもなっている。

 マンションのベランダで吸うたばこの煙で体調が悪くなったとして、住民の70代の女性が階下の60代の男性に損害賠償を求める訴訟を起こした。名古屋地裁は平成24年12月、男性に5万円の支払いを命じた。判決は確定している。

 判決では、女性の体調悪化と受動喫煙の因果関係は認めなかった。しかし、受動喫煙が健康に悪影響を及ぼす恐れがあることは公知の事実とし、ベランダでの喫煙を他の居住者に著しい不利益を与える「不法行為」とした。

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