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感染性胃腸炎の嘔吐や下痢に 脱水防止に「経口補水液」の活用を

ニュースカテゴリ:暮らしの健康

感染性胃腸炎の嘔吐や下痢に 脱水防止に「経口補水液」の活用を

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 間もなく立春を迎えるが、冬場に流行する急性の感染性胃腸炎にはまだまだ油断がならない時期だ。ノロやアデノ、ロタなど、さまざまなウイルス感染による症状は、嘔吐(おうと)や下痢などつらいもの。専門家は「脱水症状にならずに乗り切ることが大切だ」と指摘している。(兼松康)

 代謝速い子供は注意

 「どんなウイルスでも急性の感染性胃腸炎は長くて2週間程度で治まる。嘔吐物の処理をしっかりし、タオルを共有しないなど基本的な対処は同じだが、脱水症状にならないことがとても大切。しかし、それがあまり理解されていない」

 横浜市東部病院小児肝臓消化器科の十河剛副部長はこう話す。

 感染性胃腸炎のウイルスの感染力は強く、下痢や嘔吐などの症状はつらい。子供や高齢者の場合は、嘔吐物を詰まらせることによる窒息にも注意が必要だ。

 加えて重要なのが水分補給だと十河副部長は強調する。嘔吐すると何も口に入れたくなくなるため、飲み物も取らなくなりがち。嘔吐を繰り返す間は何も飲ませない方がいいが、その後も水分を取らないと、体からは水分が出ていく一方。「ナトリウムやカリウムも失われ、誰もが脱水症状になりうる」

 高齢者の場合は、一般的に体内の水分が足りないため、脱水になりやすい。また、子供はもともと水分を十分に持っているが、大人より代謝が活発なため、簡単に脱水になってしまうのだという。

 さまざまなサイン

 脱水状態になると、体にさまざまなサインが表れる。

 尿の量が減るほか、口の中が渇いてネバネバする▽汗をかかなくなる▽手足が冷たくなる▽泣いても涙が出ない-などいずれも脱水の兆候だ。

 脱水が進むと、爪の先を押してもすぐに色が戻らなくなるほか、心臓が全身に血液をめぐらせようとするため、脈や呼吸が速くなる。重症化すると「意識が混濁したり、けいれんが始まったりして点滴が必要になる」というから危険だ。

 ガイドライン作成

 脱水の防止には水分の取り方が重要だが、ただの水やさ湯、お茶などは「あまり体内に吸収されない」。

 点滴をすれば体内に水分が確実に吸収されるが、家庭では難しい。十河副部長は「費用対効果も考え合わせると、経口補水液が効果的」と指摘する。

 経口補水液はカリウムやナトリウム、マグネシウムなどの電解質がバランスよく配合されているため「軽~中程度の脱水症状なら、96%は改善する」という。経口補水液とよく似た感じで捉えられるスポーツドリンクには足りない電解質があったり、糖分が多かったりするものもある。

 「症状が表れたら、時間がたつほど脱水が進むので、速やかに経口補水液での水分摂取を始めること」と十河副部長は話す。

 子供の場合は体重(キロ)×50ミリリットル程度が目安。「体重10キロの子供なら500ミリリットルを1~5分ごとに少しずつ与えていくとよい」。高齢者の場合は、通常の体重に比べ軽くなっている分が、足りない水分と一致する。脱水症状で0・5キロ減ったら500ミリリットルの水分の摂取が必要だ。

 急性胃腸炎による脱水症状に経口補水液を使うことは世界的には常識だが、日本ではあまり知られていない。

 このため、日本小児救急医学会は今後、子供の急性胃腸炎の際に経口補水液の摂取を勧めるガイドラインを作成し、周知を図ることにしている。

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