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「第2の創業」に挑むマイクロソフト

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「第2の創業」に挑むマイクロソフト

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 【アメリカを読む】

 唐突に映った発表の数々も、実はすべてが周到な計算が働いてのことだったと思わされる経済ニュースがある。

 米マイクロソフト(MS)が大規模な組織再編を発表したのは7月11日。8月2日には、トップのスティーブ・バルマー最高経営責任者(57)が、「1年以内に退任する」と表明した。そしてその1カ月後、MSはフィンランドの携帯電話機大手ノキアから携帯端末事業を買収すると発表した。

 わずか2カ月足らずの間に連発した特大級の経営ニュースは、「MSはこれから変わる」という“本気度”を世間に印象づける狙いがあった。

 4事業部門に集約

 MSが「第2の創業」とも呼べる経営改革に挑もうとしている。圧倒的なソフトウエアのシェアで収益を支えてきたパソコン市場が低迷する中、成長分野のモバイル機器などハードやクラウド市場の拡大に対応するのが狙いだ。M&A(企業の合併・買収)や提携にも積極的に取り組み、変化の激しいIT業界で生き残るため、アップルと並ぶ「シリコンバレーの雄」が新たな羅針盤を模索している。

 ソフト開発で成長してきたMSも、パソコン市場の縮小に直面する。独自開発のタブレットなどハード事業にも力を入れ始めたがアップルやグーグルの後塵を拝し、ゲーム機も任天堂などライバルとの競合に苦しむ。

 「よりスピーディーな技術革新が可能になる。かつてパソコン市場でインパクトを与えたように、再び世界を変えよう」

 バルマー氏は社員に長文の電子メールを送り、組織再編に賭ける意気込みを示した。これまでMSはパソコン用基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」や業務用OS、ゲーム機などの製品ごとに8つの事業部門を抱えていた。それを(1)パソコンやスマートフォン(高機能携帯電話)向けのOS(2)タブレット型端末やゲーム機などハードウエア(3)アプリ(応用ソフト)とサービス(4)クラウド関連-の4部門に集約する。マーケティングや財務などの機能も集約する。

 ライバル社とも提携

 製品ごとの事業部門制を廃止し、開発を効率化して成長分野を強化するのが主眼だ。ここ近年では例がない大規模再編の狙いを、バルマー氏は「部門の寄せ集めでなく、全社的な戦略で行動する」と強調している。

 さらに自社に足りないものは、必要とあらばライバルとも結んで手に入れる。MSは6月、長年競合する法人向けソフト大手オラクルとの提携を発表し業界を驚かせた。MSのクラウドサービスでオラクルの業務ソフトが利用できる内容だ。MSのビル・ゲイツ会長(57)とオラクルのラリー・エリソンCEO(69)の創業者同士の確執は有名だが、クラウド分野の強化がともに課題で、先行するアマゾン・コムに対抗するため手を組んだのだ。

 ノキアとの提携も、出遅れたスマホ分野にてこ入れするための端末事業強化策だ。MSが買収する携帯端末事業はノキアの売上高の約5割を占める。特許使用料を含めてMSが支払う金額は54億4000万ユーロ(約7140億円)。そこまでしてもMSはスマホ事業の立て直しを急ぎ、先行するアップルやグーグルを追いかける必要があった。

 後継者争いも演出

 そして、バルマー氏は自らの引き際すらも演出した。MSはノキアの従業員約3万2000人も受け入れ、ノキアのスティーブン・エロップCEO(49)もMSに移る。エロップ氏は元MS幹部で業務用ソフト部門を率いていた。

 米ITサイトのCNETなどは、バルマー氏の有力な後任候補にエロップ氏が浮上したとの見方を伝える。

 バルマー氏は「(ソフトウエア会社から)機器とサービスの会社への変革に向け、長期的に取り組めるCEOが必要だ」とするが、ITアナリストは「世間の耳目を後継者争いにも集め、MSへの注目度を高める思惑だろう」と指摘する。

 ただ、世間の関心を高めたとはいっても、問われるのは改革の中身。スマホも先進国では市場が飽和状態に近づき、アップルやグーグル、韓国のサムスン電子などIT各社も新たな成長分野を模索している。MSが第2の創業に成功し、業界で生き残るには、後追いだけでなく、一歩先を読んで動く洞察力が欠かせない。(ワシントン支局 柿内公輔(かきうち・こうすけ)/SANKEI EXPRESS

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