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生活保護漫画「人ごとじゃない」 暮らしにひそむ「落とし穴」の恐怖

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生活保護漫画「人ごとじゃない」 暮らしにひそむ「落とし穴」の恐怖

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 普通の家族が夫の病気をきっかけに生活保護を受ける-。こんな物語の漫画が大きな反響を呼んでいる。

 暮らしにひそむ「落とし穴」の恐ろしさ。どうしようもなくなった時の命綱の大切さ。「人ごとじゃない」と読者の声も切実だ。8月からは保護費が引き下げられ、秋の臨時国会では自立支援や不正受給対策が議論される見通し。当事者の立場を身近に感じることができる、と関係者も注目している。

 当事者の立場身近に

 「陽のあたる家」は、生活保護を主題にした異色の漫画。40~50代の女性向けコミック誌「フォアミセス」で8月号から3回続きで連載された。

 主人公の主婦は夫と2人の子供に囲まれ、パートで働きながら幸せに暮らしていた。

 ところがある日、夫が病気で倒れる。長期療養が続き、まもなく解雇されてしまう。

 収入は激減。パートを掛け持ちするが生活費に足りない。娘は部費が払えず部活を辞める。息子の底の抜けたスニーカーも買い替えてやれない。夫は退院したが働けず、家で看病を始める。そして自分も過労で倒れてしまう。家賃も光熱費も払えない。

 「死」を意識し、知人にも励まされて生活保護を受けることを決める。だが周囲からは「税金で好き放題しやがって!」と心ない言葉を浴びる。主人公は心の中で叫ぶ。「生きていたいって思うことが、そんなに悪いことなの?」

 出版元の秋田書店(東京)には読者からの声が続々と寄せられている。

 「うちも貯金がない。誰かが病気やけがで入院したら生活できない。不安でたまらない」(50代主婦)、「申請までの大変さ、申請後の大変さ、心の痛み、子供の思いが伝わった」(40代パート女性)、「小さいころ生活保護に支えられていた。身に染みた。とても痛かった」(40代パート女性)-。

 漫画の取材に協力したNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の稲葉剛代表理事も評価する。「役所の窓口で申請を受け付けてもらえない“水際作戦”に遭ったり、受給してから後ろ指を指されたり-。当事者がどういう気持ちでいるかよく描かれている」

 誰にでも受ける権利

 実際に保護を受けている福島市のシングルマザー(35)は「まさにこの漫画の通り」と語る。

 離婚後、生命保険の営業をしていたが、鬱病になった。8月から保護費が月4000円引き下げられたため、食費を削ったり固定電話を解約したりするつもりだ。

 「まさか自分が生活保護を受けるとは思っていなかった。病気で働けない人まで後ろめたい思いをするのは納得いかないし、悲しい」

 作者でシングルマザーの、さいきまこさんが言葉に力を込める。「生活保護は恥という考え方は強い。でも必要なら誰にでも受ける権利がある『社会保障』だということを知ってほしい」(SANKEI EXPRESS

 生活保護 憲法の生存権の理念に基づき、最低限度の生活を保障し自立を助ける制度。国が定める最低生活費より収入が少ない場合に、その差額分を支給する。

 全国で生活保護を受けているのは6月時点で約215万人、約158万世帯。食費など日常生活費に充てる「生活扶助」、家賃に相当する「住宅扶助」、医療費を全額公費で負担する「医療扶助」などがある。

 地域や世帯構成によって支給額は異なる。2011年の厚生労働省の調査では、受給者で50~60代は男性が多いが、20~40代や70代以上は女性が多い。

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