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「戦うママ」ソチへ一歩前進 安藤美姫、関東選手権V
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4月の女児出産を経てソチ冬季五輪出場を目指すフィギュアスケートの元世界選手権女王、安藤美姫(みき)選手(25)=新横浜プリンスク=が10月14日、ソチ五輪最終選考会を兼ねた全日本選手権1次予選の関東選手権(新横浜スケートセンター)を1位通過し、約2年ぶりの国内復帰戦を優勝で飾った。次の関門は2次予選の東日本選手権(11月1~4日、前橋市)で、6位以内に入れば、12月の全日本選手権への出場権を得られる。ただ、この日は連続ジャンプなどを失敗し、スタミナ不足も露呈。史上初の「ママさん選手の五輪シングル出場」に向けた戦いは、正念場を迎えた。
新横浜スケートセンターを埋めた約800人の観客の目は、前日のSP同様、フリー演技が行われたこの日も、異例の挑戦に踏み出した安藤一人に注がれた。例年、関東選手権には主に選手の関係者しか来場しないが、今年は安藤の出場によって混雑が予想されたため、会場が埼玉県の川越スケートセンター(200人収容)から急遽(きゅうきょ)、変更され、1000円で入場券が発売された(例年は入場無料)。チケットは即、完売し、当日券もないといった状態で、鬼気迫る母の戦いを見届けようとするファンの高い期待と関心をうかがわせた。
安藤は前日のSPで56.25点をマークし、出場5選手中で1位。トップには立ったが、日本の審判団が採点する大会では自身にとって過去最低点で、元世界女王としては到底満足できるものではなかった。14日のフリーも1位となり、合計147.30点で優勝したが、2回転となったトーループの着氷で手をつくなどジャンプが乱れ、スピンにも課題を残した。終了間際にはスタミナ切れで転ばないのがやっとといった状態に。東日本選手権への出場枠は7人あったため、今回はケガなく無事に滑り終えさえすればよかったとはいえ、安藤は演技後、額に手を当てて落胆の表情を浮かべた。
SP、フリー、合計のいずれも、復帰初戦で2位に入った2週間前のネーベルホルン杯(ドイツ)の得点を下回り、安藤は書面で「久しぶりの国際大会の疲れを残してしまい、課題も残る2日間になったが、今の自分に何が足りないかが明確になった。心に残る演技をお届けできるよう努力していきたい」とコメントした。
過去、世界選手権優勝2回、全日本選手権優勝3回、2010年バンクーバー五輪5位の実績を誇る安藤なら、東日本選手権の通過も間違いないとみられるが、五輪代表3人の中に入るのは至難だ。
ライバルは「シード」されて全日本から出場してくる、浅田真央(23)、村上佳菜子(18)=ともに中京大、鈴木明子(28)=邦和スポーツランド、そして昨季の全日本選手権3位の宮原知子(さとこ、15)=大阪・関大高=の4人だが、五輪代表になるには最低でも全日本で3位に入らなくてはならない。
通常、女性が出産してから全盛期の筋肉に戻るためには、約1年間のトレーニングが必要とされるが、ソチ五輪は4月の出産から約10カ月後に当たる。また、出産によって骨盤が広がっているため、踏ん張りがきかずジャンプがしづらいというハンデもある。さらに育児のための母乳でカルシウムが不足がちになり、ケガのリスクも大きくなる。
まさに逆境中の逆境にあるといっても過言ではないが、女子で史上初めて4回転ジャンプを決めた安藤は、屈指の才能の持ち主だ。「母のプライド」を懸けて戦い抜く。(SANKEI EXPRESS)