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まさにキャプテン 宮本選手に感謝、感謝
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日本から残念なニュースが飛び込んできた。
10月4日。ヤクルトの宮本慎也さん(42)が今季限りでユニホームを脱ぐことになり、現役最後の試合に臨んだ。
「『球界の宝』と呼ばれる人がまた引退しちゃうんだなぁ」。アメリカで引退のニュースを知ったとき、しんみりとした気持ちになった。
大学、社会人の野球を経験し、そこからプロに入って2000安打を達成した。通算安打は2133本。考えてみれば、すごいことだ。宮本さんといえば、「バント、守備の人」というイメージが強いが、打者としても一流であることがこの記録からも分かる。
「大げさなことをしない」「確実性の人」。投手の自分から野球人として宮本さんを見たときの印象だ。普通の野手だったらファインプレーに見えるところを、宮本さんは普通のプレーにしてしまう。打球への素早い反応や優れたグラブさばきができるからこそだ。
投げている側からすれば、後ろにこんな堅実で、かつ正確なプレーをする人が守ってくれてたらどれだけ助かるだろうか。巨人時代、ベンチから宮本さんのプレーを見ながら、いつもそう思っていた。
シーズンではライバル球団にいた宮本さんと、日の丸を一緒に背負う機会が3度あった。
五輪に初めて日本代表がオール・プロで臨み、銅メダルだった2004年のアテネ大会、「世界一」の称号を手にした06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、そしてまさかのメダルなしに終わった08年の北京五輪だ。宮本さんと一緒に戦った記憶は今も鮮明だ。
同じチームなってまず思ったことは、何よりもリーダーとしての役割をしっかりと果たせるということだった。どんな実績がある選手だろうと、宮本さんはチームの規律を乱したり、練習をおろそかにしたりしたら「ダメなものはダメ」と言える人だ。キャプテンと呼ばれる人は、こういう人のことを言うんだろうなと、すごく勉強させられた。
今でも一番印象に残っている言葉は、「一生懸命やって負けたんなら仕方ないってよく言われるが、代表ではそれが通らない。負けたらダメなんだ」。日の丸を背負っているとき、宮本さんは常にこういう思いでプレーしてきたのだ。強烈な一言だった。その言葉を聞いたときに、身が引き締まる思いというか、気持ちがグッと締まった感じがしたのを覚えている。
その言葉を聞く少し前の代表の練習で、自分自身が少し悪ふざけをしていて、実は宮本さんに怒られたのだが、それも今となっては大切な良い思い出である。
先輩や同年代の選手だけでなく、少し年下の世代でも引退する選手が出てきた。
私自身も38歳。決して「引退」の2文字はひとごとではない。ただ、まだまだ現実味を帯びているわけではない。野球に限らず、他のどのスポーツでも引退を決めるときは何を基準にすればいいのか誰もが迷う。まだまだ選手としてプレーできるのにと思う場合もある。結局は自分がどこかで線引きをして決断するのだろう。
宮本さんの引退試合の日、ささやかながら球場に花束を贈った。律義な宮本さんからは、わざわざ携帯電話にメールでお礼の言葉を送信してくれた上に、感謝の気持ちを改めて伝えていただいた。
「とにかくお疲れさまでした。そして、ありがとうございました」。球界を代表する名選手、宮本さんにこれまでの感謝の気持ちをこの場でも述べさせてもらいます。(レッドソックス投手 上原浩治/SANKEI EXPRESS)