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政治
「原発ゼロ」小泉発言に右往左往
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小泉純一郎元首相の「脱原発」論が与野党双方を揺さぶっている。安倍晋三政権は原発の再稼働や輸出を推進しているだけに、自民党は小泉発言に真っ青となり、野党の中には小泉氏と面談し、共闘を模索しようとした政党もあった。小泉発言に一喜一憂せず、毅然(きぜん)と構える政党はほとんど見当たらない。今回の一件で問われているのは政党の矜恃(きょうじ)にほかならない。
「放射性廃棄物の最終処分場もないのに原発を進めるのは無責任だ」「日本は原発ゼロでも十分やっていける」「処分場を造れば原発はやっていけると考えるほうが楽観的で無責任だ」
とどまるところを知らない小泉節。ついに自民党の石破茂幹事長も11月5日の記者会見で「発言がどのような論理展開なのか精査しなければ党として論評するのは適切ではない」と語り、党見解を示す考えを示した。「脱原発」の世論が強まれば安倍政権への風当たりも強まってしまう…。そんな懸念があってのことなのは想像に難くない。
(11月)2日には小泉氏のかつての懐刀、飯島勲内閣官房参与がテレビ東京の番組で「いつぐらいまでにゼロかという発言はしていない」と語り、政府方針との齟齬(そご)を埋めるのに躍起となった。
安倍首相が「政権を預かる立場の責任者としては、国民生活や経済活動に支障がないよう、責任あるエネルギー政策を進めていく」と、スマートに脱原発を否定したにもかかわらず、自民党や政府関係者は右往左往するばかりだ。
目も当てられないほどのはしゃぎぶりを見せたのは社民党だ。吉田忠智(ただとも)党首は10月29日、又市征治(またいち・せいじ)幹事長とそろって小泉氏と都内で会談し、脱原発での連携を要請した。案の定、小泉氏に「それぞれの党が脱原発に向けて努力すべきだ」と軽くいなされ、その光景は小泉氏の手のひらで踊らされているかのようだった。
そんな風に映ることを知ってか知らずか、社民党はその日のうちにホームページに、吉田、又市両氏が小泉氏を挟んで座っている写真を掲載した。
これだけではない。みんなの党の渡辺喜美代表は10月17日の衆院代表質問で9月末に小泉氏と意見交換したことをわざわざ紹介し、生活の党の小沢一郎代表は小泉氏との会談に意欲をみせている。
野党の「浮かれぶり」は一体、何を意味するのか。
永田町では今、日本(にっぽん)維新の会を中心に民主党、みんなの党との野党再編を狙う動きと、自民党を巻き込んだ憲法改正を軸にした政界再編を模索する動きの双方がある。だが、どちらも現実味は乏しい。ましてや原発問題を軸にした再編をうかがう動きは皆無に等しい。「脱原発」を旗印にした新党は左傾化集団になりかねないため、保守系議員を巻き込むのは極めて困難だからだ。
このため、小泉氏も吉田氏に「新党を作る気はない」と念を押している。そんなことは、よほどの政局音痴でない限り、永田町に身を置く議員なら百も承知のはず。結局、小泉氏に秋波を送る政党は、小泉氏の国民的人気にあやかろうとしているに過ぎない。それは自らの政党の力量のなさを認めているに等しい。
自民党にしても小泉氏の発言に過剰に反応することは、「『安全が確認できた原発の再稼働を目指す』という政府・与党の方針に自信がないのか」と世論からみられてしまうのが関の山だ。
「大先輩だが、スルーするしかない。どちらが正しい、正しくないという議論ではない。どちらも考えていかなければならない」
そう語るのは自民党の野田聖子(せいこ)総務会長。至極もっともな発言として受け止めたい。(坂井広志/SANKEI EXPRESS)