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科学
【エコノナビ】ホーキング博士に教えてあげたい
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車いすの物理学者として著名なスティーブン・ホーキング博士が音声合成装置を使って講演する姿をテレビ番組で見たことがある人も多いだろう。
全身の筋肉の萎縮が徐々に進行していく「筋萎縮性側索硬化症」である博士は、頬の筋肉の微妙な動きをセンサーに感知させて、パソコンに文字入力し、それをさらに音声に変換して意思を伝達している。しかし、病状の悪化で、博士はこの方法での意思疎通も難しくなりつつあるそうだ。そこで、博士は半導体メーカーのインテルなどの協力で新たな意思伝達手段を探しているという。
つくば市にある独立行政法人・産業技術総合研究所の長谷川良平・研究グループ長らが開発した「ニューロコミュニケーター」も有力候補の一つではないか。
これはパソコン画面上に表示された絵カードの問いかけに対する脳波の変化をリアルタイムで解読し、音声合成装置とアバター(CGキャラクター)によって意思伝達を行う装置で、体の筋肉を使わなくてもコミュニケーションが可能になる。長谷川氏によれば、来年4月には臨床研究モデルを筋萎縮性側索硬化症などの重度運動機能障害者に提供していくという。
この研究は、先月(10月)31日と今月(11月)1日の両日、つくば市で開かれた「産総研オープンラボ2013」でも実験の様子が公開された。産総研には、こうした医療機器から創薬、再生医療にいたるまで、さまざまな医療産業の種が豊富にある。例えば、無尽蔵にある微細藻類のミドリムシを使ってプラスチックやナノファイバーをつくる研究、鶏の遺伝子を改変して抗体医薬を大量生産する技術など、すでに実用段階にきているものも少なくない。
安倍晋三政権の日本再興戦略の柱の一つは医療産業。長谷川氏によればニューロコミュニケーターも使い方次第で、ロボット制御や教育・娯楽、消費者の潜在意識を探るマーケティングなどにも応用できる。くれぐれも産総研を宝の持ち腐れにしないよう民間との試行錯誤の連携が不可欠だ。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS)