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政治
【徳洲会事件】病床の虎雄氏主導 指揮系統にメス
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医療法人徳洲会(とくしゅうかい)グループの公職選挙法違反事件で、東京地検特捜部などは11月12日、一斉捜索から約2カ月での関係者逮捕に踏み切った。捜査のポイントは、グループ創設者の徳田(とくだ)虎雄元衆院議員を頂点としたピラミッド型組織の中で、誰が職員派遣を計画し実行に移したのかという点に集約された。今後の焦点は、候補者である徳田毅(つよし)衆院議員の刑事責任追及に移る。
「誰が企図して、誰が推し進めたのか。その点を捜査で解明する」
9月17日の家宅捜索後、ある捜査幹部はこう語気を強めた。
特捜部は昨年の衆院選から約9カ月かけて内偵捜査を展開。一斉捜索以降は、選挙区に駆り出された職員数が予想を超えて約500人規模になったため、警察の協力を得て、調書作成の全国行脚を綿密に進めた。
その一方で、一連の運動員派遣を主導したのは「毅を総理にする」などと病床から檄(げき)を飛ばした虎雄氏と推定。発言を記録したパソコンを押収するなどし、トップの言葉を詳細に分析した。
11月第2週からは一度聴取した職員の再聴取を開始し、逮捕状取得に向けて詰めの捜査を進めた。その結果、頂点の虎雄氏の下に、現地で運動員を指揮した越沢徳美(こしざわ・なるみ)容疑者(50)とスターン美千代(みちよ)容疑者(46)が位置し、さらにその下に3つの選挙事務所のリーダー的立場だった石川一郎容疑者(58)らがいる「動員のピラミッド」が浮上。病状を勘案して虎雄氏の逮捕こそ避けたが、関係者の立件は不可欠と判断した。
そんなピラミッドに支えられた毅氏は、任意の事情聴取に対し、選挙区に病院職員が集結していたことは認めたが、「経理は実務担当者に任せていた」と説明し、違法性についての認識を否定した。
しかし、関係者によると、毅氏は虎雄氏の秘書時代に選挙区に入った経験があり、過去の運動員派遣の実情はある程度把握していたとみられる。
法務・検察内部では「今回の派遣の違法性を知らないことはあり得ない」(検察幹部)という声もある一方、「実際に把握していたということを証明するには証拠がない」(別の幹部)との意見もあり、慎重に捜査を進めている。
関係者が注目するのは美千代容疑者の証言だ。現地の最高責任者だったほか、“裏”の資金の管理も担っていたとされ、捜査関係者は「毅氏にも近い立場であり、毅氏の認識を探るカギとなる」としている。
≪発症後、2人の姉がグループ私物化≫
徳田毅(とくだ・つよし)衆院議員の姉2人は、医療法人徳洲会(とくしゅうかい)前理事長の徳田虎雄・元衆院議員に厳しく教育された。だが、虎雄氏が難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、床に伏せるようになって以降、虎雄氏が築いたグループ企業を私物化するようになったという。
「(毅氏の)お姉さんとは知らなかった。大変美人のお姉さん。皆さんも目に問題が出たら赤坂のクリニックに」。昨年12月の衆院選翌日、都内のホテルで開かれた毅氏の政治資金パーティー。当時、自民党総裁だった安倍晋三首相は、官房長官時代にスターン美千代容疑者が運営する東京都港区の眼科クリニックで治療を受けたエピソードを紹介し、美千代容疑者を持ち上げた。
徳田家の第1子、越沢徳美(こしざわ・なるみ)容疑者と次女の美千代(みちよ)容疑者は、虎雄氏が大阪大学医学部在学中に結婚した妻(74)との間に生まれた。
当時は虎雄氏の父が亡くなり、虎雄氏が鹿児島県・徳之島から一族を大阪に呼び寄せたばかり。その後生まれた毅氏らを合わせた2男5女の子供たちは2段ベッドのある一室で寝起きするなど、苦しい経済状況だったという。
そんな中、虎雄氏は帰宅時に子供たちに正座で出迎えさせるなど厳しいしつけを施し、四女と毅氏以外の5人を医業の道に進ませた。徳美容疑者も医者としてグループ病院に勤務した経験があり、美千代容疑者は眼科医として独立した。
姉妹がグループ運営への関与を深めたのは、虎雄氏がALSを発症した2002年ごろからだという。虎雄氏の病状が悪化するにつれ、美千代容疑者も徳美容疑者と同様に関連会社の社長に就任した。
姉妹は、医療機器納入会社「株式会社徳洲会」(通称・カブトク、東京都千代田区)から多額の役員報酬を受け取ったり、実体のない顧問契約を結んだりしたという。1億円以上する都心の高級マンションに住み、グループ企業が所有する1000万円以上の国産車をグループ職員に運転させていた。
グループ関係者は「虎雄氏は徳洲会を立ち上げた当初、病院に泊まり込んで運営にあたるなど苦労してきた。だが、姉妹は経営が安定してからの徳洲会しか知らない。虎雄氏の苦労が姉妹には伝わっていないようにみえた」と話した。(SANKEI EXPRESS)