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科学
【福島第1原発】4号機 燃料取り出し開始 廃炉「第2期」に
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東京電力福島第1原発4号機(福島県大熊町)の燃料貯蔵プールに保管されている燃料取り出し作業のイメージ=2013年11月18日現在 東京電力は11月18日、福島第1原発4号機の燃料貯蔵プールに保管されている燃料の取り出しを始めた。廃炉が決まった1~4号機のプールからの本格的な取り出しは2011年3月の事故後初めて。政府と東電の廃炉工程では冷却維持と燃料取り出し準備を「第1期」としており、これで廃炉工程は「第2期」に移行。30~40年かかるとされる廃炉作業は最初の節目を迎えた。
18日は、午前に「キャスク」と呼ばれる燃料輸送容器(長さ約5.6メートル、直径約2.1メートル、重さ約91トン)をプール内に搬入。午後3時18分に燃料を引き上げる装置が稼働し、3時25分には1体目の燃料の引き上げが始まった。燃料の長さは約4.5メートル。燃料を破損させないよう、1秒間に1センチ程度の速度で引き抜き、キャスクに収容した。
1つのキャスクには22体の燃料が収容可能で、18日は4体を装填(そうてん)、19日に残る18体を収容する。その後、キャスクを4号機から約100メートル離れた共用プールにトレーラーで移送する。
燃料貯蔵プールには、未使用燃料202体、使用済み燃料1331体が保管されており、今回は比較的扱いやすい未使用燃料を取り出す。次回以降は使用済み燃料の取り出しにも着手する。プールには破損して取り出しが困難な燃料が3体あり、東電は専用キャスクの製造を検討している。
4号機の燃料1533体の取り出しは来年末に完了予定。4号機は事故時は定期検査中で、原子炉の燃料はプールに移されていた。
≪困難な作業 事故に備え多重防護≫
11月18日から始まった燃料貯蔵プールからの燃料取り出しは、1年かかる移送で、燃料損傷により取り出せなかったり、運搬中に落下する懸念が残る。大破した建屋での作業は世界的にも前例がなく、東電は事故防護策を何重にも施し作業に当たる。
「(燃料を)押しても、引いても出てこないという状態が一番懸念される」。原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員は、取り出し作業に立ちはだかる最大の障害として、プール内の燃料貯蔵ラックが傷ついて湾曲し、燃料が引っかかって取り出せない「かじり」と呼ばれる現象を挙げた。
通常の取り出し作業では、燃料をクレーンで350キロほどの荷重で引っ張るところを、今回はかじり対策として約3倍の1トンの力を加え引き抜く。燃料は1トンの荷重をかけても破損しないことが事前に確認されている。
東電は、燃料を高さ最大17メートルから落下した場合の分析を行い、燃料がクレーンから落ちて燃料を覆う「被覆(ひふく)管」が損傷しても、外部へ出る放射線の影響は約0.78マイクロシーベルトで微量だとする検証結果を報告。更田委員も「被覆管に軽微な損傷を生じた程度では、周辺に与える影響はそれほど大きくない」との見解を示した。
一方、水素爆発で損傷した4号機原子炉建屋は、東京タワーに使用されている鋼材と同じ約4200トンの鉄骨で増強された。東電は「東日本大震災と同規模の揺れに耐えられる」と説明、取り出し作業中に大地震が発生しても安全性は担保されるとしている。耐震設計が施されたクレーンのワイヤは二重化、一本が切れても燃料を取り落とさない仕組みになっている。
トラブルに備えた防災対策も準備された。福島第1原発の周辺は帰還困難区域に指定されており、来年末まで続く取り出し作業中にも一時立ち入りしている住民らがいる。作業期間中は、立ち入る住民らにトランシーバーを貸し出し、トラブル発生時に、現場から福島市にある緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)を通じ、住民らへ避難を指示できるようにしている。
規制委は使用前検査などで安全性を確認してきたが、作業開始に伴い現場に駐在する保安検査官を増員。当面はテレビ会議を開くなどして、東電側と議論しながら監視を強化する。(SANKEI EXPRESS)