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黒田総裁 物価上昇に自信、追加緩和も 日銀、金融政策の継続を決定

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黒田総裁 物価上昇に自信、追加緩和も 日銀、金融政策の継続を決定

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日本銀行の新体制=2013年3月21日(辞令は2013年3月20日付)  日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は11月21日、金融政策決定会合後の記者会見で「海外経済の見通しを(10月に比べ)半歩程度進めた」と述べ、米欧を中心とする海外経済の回復が、輸出増加などを通じ国内経済に好影響を与えるとの考えを示した。この日の決定会合では4月に導入した大規模な金融緩和の継続を全員一致で決めた。国内景気の現状判断は前回10月の「緩やかに回復している」を据え置いた。

 《米国の景気回復テンポは加速する》

 黒田総裁は会見で、米国の景気見通しについてこう強調。海外経済の見通しについて「全体として緩やかに持ち直している」と述べ、前回10月の「徐々に持ち直しに向かっている」から表現を上方修正した。

 特に景気回復が顕著なのが米国と欧州だ。米国は財政協議を巡る与野党の対立から10月に政府機関が一部閉鎖されるなど景気や雇用への影響が懸念された。

 だが、10月の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数の市場予想は前月比で12万5000人増だったが、ふたを開けてみれば20万4000人増と予想を裏切り大幅に改善した。欧州についても黒田総裁は「景気の持ち直しは明らかだ」と明言した。

 海外経済が堅調なことから、黒田総裁は日本の輸出が「緩やかに回復する」と強調した。一方で新興国経済については「一部で強い経済成長に陰りがみられる」とし、海外リスクについて注意深く見極める姿勢も示した。

 《生産・所得・支出の好循環が続くなかで、国内物価は上昇する》

 黒田総裁はこれまでも個人消費を中心とした「強めの内需」が、国内景気を牽引(けんいん)すると説明してきた。内閣府が(11月)12日に発表した消費者心理を示す10月の消費者態度指数が、2カ月ぶりに悪化するなど個人消費には一服感もみられる。

 ただ、黒田総裁は「個人消費の基調に変化はなく、先行きも底堅い」と強調した。底堅さの背景には「雇用・所得環境の改善がみられる」(黒田総裁)ことがある。

 9月の完全失業率は前月比で0.1ポイント改善した。また、景気回復に伴い賃金の上昇圧力も高まる。黒田総裁は「来春の春闘(での賃上げ)も含め賃金上昇のテンポが速まることを期待している」と語った。

 消費者物価指数(生鮮食品を除く)は9月まで4カ月連続で上昇している。黒田総裁は2年で2%程度という物価上昇目標に向け「順調な道筋をたどっている」と自信をみせた。

 《具体的な対応を話す時期ではないが、(緩和)政策の余地はある》

 黒田総裁は国内経済にリスクが顕在化した場合、「躊躇(ちゅうちょ)することなく政策を調整する」と述べ、追加緩和の可能性に言及した。

 黒田総裁は「現時点で日本経済は予想された経路をたどっている」とした上で、追加緩和については「上下双方向のリスクを見て、必要な調整を行う」と述べた。

 現在の物価上昇が、円安による輸入価格の値上がりを反映していることなどから、市場では「2年で2%の物価上昇の達成は難しい」(大和総研の熊谷亮丸(みつまる)チーフエコノミスト)との見方が大勢だ。

 ただ、国債を大量に買い入れる日銀の金融緩和は、政府の借金を日銀が穴埋めする「財政ファイナンス」にあたるとの懸念もある。日銀は安易な追加緩和に踏み切れないのが実情だ。追加緩和をすれば、金融緩和から脱却する「出口戦略」も難しくなる。

 黒田総裁は出口戦略について「具体的なイメージを持つのは時期尚早だ」と述べるに止めた。日銀は金融緩和の導入以上に難しい判断を迫られる。(SANKEI EXPRESS

 【日銀総裁会見のポイント】

・2%の物価上昇目標の達成が難しくなった場合でも金融政策の余地はある

・経済の物価のリスクが顕在化すれば、躊躇(ちゅうちょ)なく金融政策を調整

・金融政策の具体的な対応を話すのは次期尚早

・個人消費は、消費税増税前の駆け込み需要を除いても底堅く推移する

・海外経済の見通しを半歩程度進めた

・米国の債務上限問題は結果的に小さな影響にとどまった

・欧州経済が持ち直しているのは明らか

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