SankeiBiz for mobile

不測の事態現実味 日本が厳重抗議 米、強い懸念も「協調路線」と板挟み

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

不測の事態現実味 日本が厳重抗議 米、強い懸念も「協調路線」と板挟み

更新

中国政府は2013年11月23日、東シナ海上空に防空識別圏を設定したと発表した。23日午前10時(日本時間午前11時)から施行した。  日本政府は11月23日、中国が尖閣諸島上空を含む東シナ海に防空識別圏を設定したことを受け、「わが国固有の領土である尖閣諸島の領空を含むもので、全く受け入れることはできない」として、中国側に厳重抗議した。自衛隊機などが尖閣付近を飛行した際に中国機が緊急発進(スクランブル)することも否定できず、政府は警戒を強めている。

 安倍晋三首相は23日夕、公邸で米村敏朗(よねむら・としろう)内閣危機管理監や兼原信克、高見沢将林(のぶしげ)両官房副長官補らの報告を受け、対応を協議。外務省の伊原純一アジア大洋州局長は23日、韓志強駐日公使に電話し、「尖閣諸島をめぐる状況を一方的にエスカレートさせるもので、現場空域で不測の事態を招きかねない非常に危険なものだ」と抗議した。

 防空識別圏は、各国が防空の必要上それぞれ国内法で設定しており、中国の防空識別圏に日本が従う義務はない。今回の設定は、尖閣諸島を自国の領土と主張する中国の示威行動の一環とみられている。日本も東シナ海に独自の防空識別圏を設定し、自衛隊が地上レーダーや早期警戒管制機(AWACS)などの空中レーダーで空域を常に監視。進入してきた国籍不明機には、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進して動向を把握している。

 政府が昨年9月に尖閣諸島を国有化してから中国機の領空接近は激増。2012年度の中国機へのスクランブルは306回に上り、11年度(156回)から倍増した。今年度も4~9月で149回に達している。日中両国の防空識別圏が重なる部分は、その“主戦場”といえる空域。空自の戦闘機などがスクランブルで防空識別圏を飛行中、中国側が「対抗措置」として戦闘機を飛来させれば、不測の事態につながりかねない。小野寺五典(いつのり)防衛相は23日、防衛省内で記者団に「一方的な指定は大変危険な行為だ」と指摘。「警戒監視については従前にも増して、しっかりとした対応が必要だ」と強調した。

 日中関係をめぐっては、昨年5月を最後に首脳会談が途絶えたまま。中国側の新たな強硬策で対話はさらに遠のくことになりそう。外務省の斎木昭隆(さいき・あきたか)事務次官は25日に程永華駐日大使を呼び、抗議とともに日本側の立場を伝える方針だ。

 ≪米、強い懸念も「協調路線」と板挟み≫

 米政府筋は11月23日、中国が尖閣諸島の上空に、防空識別圏を設定したと発表したことへの強い懸念を表明した。一方、オバマ政権は中国に対する協調主義的な「関与」を強めており、「抑止」の相対的な低下が懸念される。

 政府筋は「尖閣諸島(沖縄県石垣市)は日本の施政下にあるというのが、米政府の見解だ。(米国による日本の防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条の適用対象であり、防空識別圏の設定は、さらなる緊張をもたらす措置として懸念される」と語った。

 オバマ政権は、軍事的にはアジア・太平洋地域における中国の海洋進出拡大に対抗し、再均衡戦略という抑止政策を、一方外交では協調主義的な関与政策を、いわば「車の両輪」として進めている。

 だが、中国が尖閣諸島の上空に防空識別圏を設定したことは、少なくとも尖閣諸島問題においては抑止が機能していないことを意味する。その上、バランスは関与に傾きつつあり、中国を過度に刺激しないという“低姿勢”ぶりも目立つ。

 北京の天安門前で10月末に起きた車両突入事件などについてオバマ政権は「状況を監視しており、情報を評価、精査している」(国務省のサキ報道官)などの見解を示しているだけだ。

 ライス米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も最近のワシントンでの講演で「中国とは大国関係の新たなモデルを模索している」と、批判を避けた。

 オバマ政権は同盟国である日本と韓国の対立が、初代韓国統監の伊藤博文を暗殺した安重根の石碑建立をめぐり、さらに悪化していることを憂慮してもいる。サキ報道官は22日、「対話により友好的に解決するよう日韓両国に促す」と述べた。計画には中国が協力しており「中韓の過度の接近は、中国による日米韓同盟の分断につながる」(別の政府筋)という懸念が、内包されている。

 バイデン副大統領は12月、日中韓3カ国を歴訪するが、中国が新たな防空識別圏を設定するという状況下で協調主義的な関与政策がどこまで通用するのか、試される。(ワシントン 青木伸行/SANKEI EXPRESS

 ≪中国船、4日連続航行≫

 尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で11月23日、中国海警局の船4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。中国当局の船による領海侵犯や接続水域での航行が確認されたのは4日連続。第11管区海上保安本部(那覇)によると、4隻は「海警2101」「海警2113」「海警2146」「海警2151」。領海に近づかないよう巡視船が警告すると、海警2151から日本語と中国語で「中国の管轄海域で定例パトロールをしている」と応答があった。(SANKEI EXPRESS

ランキング