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社会
【OECD学習到達度調査】日本の15歳「脱ゆとり」で学力向上
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経済協力開発機構(OECD)は12月3日、65カ国・地域の15歳男女約51万人を対象として2012年に実施した国際学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。日本は09年の前回調査に比べ、「読解力」が8位から4位に、「科学的応用力」が5位から4位に、「数学的応用力」が9位から7位に上昇。「脱ゆとり路線」の成果が着実に表れた結果となった。また、3分野とも1~4位をアジア勢が独占した。
2000年に始まったPISAは3年ごとに行われ、学校に通う各国の15歳生徒が参加。日本では今回、無作為に抽出された約6400人の高校1年生が3分野の学力テストと学習意識調査に回答した。
公表結果によると、OECD加盟34カ国の平均を500点と換算したときの日本の得点は、読解力が538点で過去最高を記録。科学的応用力は547点、数学的応用力は536点で、いずれも2000年調査に次ぐ過去2番目の高得点だった。
前回初参加で3分野ともトップだった上海が今回も1位を独占。2位と3位は香港とシンガポールが占めたほか、トップ10の過半数がアジア勢だった。OECD加盟国だけで比べると、日本が読解力と科学的応用力で1位、数学的応用力は2位だった。
日本の順位はこれまで、2000年調査ではトップクラスだったが、03年調査と06年調査で連続して急落した。このため文部科学省は2007年から全国学力テストを実施するなど学力向上策に取り組み、2009年調査で読解力が15位から8位に回復、一定の成果を見せていた。
今回のPISAは、脱ゆとり路線を掲げて08年に改訂された新学習指導要領で学んだ生徒が初めて受けるテストで、文科省では「一連の学力向上策の成果が着実に表れている」と分析する。下村博文文科相は「少人数教育の推進や教職員の資質向上によるきめ細やかな指導体制をさらに整備し、学力と規範意識を兼ね備えた世界トップの人材育成を進めていきたい」と述べた。
≪9年前のPISAショックで目覚める≫
2012年実施の経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)では、日本の15歳の学力回復傾向が明確になった。09年の前回調査より順位も得点も大幅にアップした最大の要因は、ゆとり教育からの脱却であるといえる。教育関係者からは「このレベルを維持し、向上させるためにも、教育再生の施策を着実に進めるべきだ」との声が上がる。
「9年前のPISAショックで日本は目が覚めた。教職員組合の要望も強く、それまではゆとり一色だったが、このショックで潮目が大きく変わり、省内からもゆとり政策への批判が出るようになった」と、文部科学省幹部が打ち明ける。
PISAショックとは、04年に公表された03年調査のことだ。初回の00年調査で日本の国際順位は数学的応用力が1位、科学的応用力が2位、読解力が8位とトップクラスだったが、03年調査で数学6位、読解14位と急落。教育政策の見直しを求める声が高まった。
文科省では1980年代から、学習内容を徐々に削減する路線をとってきた。2002年には授業時間の3割削減と完全週5日制が導入され、本格的なゆとり教育が始まった。
だが、PISAショックを受けて政策を変更し、05年に中山成彬(なりあき)文科相(当時)がゆとり路線の学習指導要領見直しを中央教育審議会に要請。この間にも学力は低下し続け、PISA06年調査で日本の順位は数学10位、科学6位、読解15位まで落ち込んだ。
学力低下に歯止めをかけたのは、07年から実施された全国学力テストだった。民間教育臨調の村主真人(むらぬし・まさと)事務局長は「生徒の学力状況が明らかになり、学校現場に教育改善の機運が高まった」と分析する。PISAの09年調査で日本の順位は数学9位、科学5位、読解8位に回復した。
09年からはゆとり脱却を掲げた新学習指導要領が一部実施され、学習内容が大幅に拡充した。そして迎えた今回のPISA-。ベネッセ教育総合研究所の新井健一理事長は「PISAショック以降、ゆとりか詰め込みかの二者択一ではなく、学力向上に向けたバランスのいい施策が行われてきた成果が出たのではないか」と話している。(SANKEI EXPRESS)