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【軍事情勢】韓国は対日ストーカー国家?
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軍の装備は、自国の置かれた安全保障環境や財政状況で決まる。だのに「韓国軍は自衛隊を観(み)て決める」と、8月11日付小欄《韓国軍が欲しがる自衛隊のガム》で指摘した。しかし、韓国人ながら米諜報機関員となった知人が「子供のようにガムを欲しがる」と嘆く対象は、軍だけではなかった。ここまで日本が強烈に意識されると、国家挙げてストーカー行為をされているようで、怖い。
韓国国会内の一室で11月末、与党セヌリ党の執行部幹部や中堅議員から怒号が飛び交った。議題は、韓国政府が突如「事実上」の導入を決めた、米ロッキード・マーチン社が中心となり開発中のステルス戦闘機F-35A。12月中の正式決定を前に、なぜ「事実上」の決定だったのか。もしかして、ロッキード社は日本に感謝する!?
韓国防衛事業庁は、想定していた競争入札基準額8兆3000億ウォン(約8100億円)をロッキード社が超えたとして8月、F-35Aを選定より除外。従って、ユーロファイターやF-15SEなど、他社の戦闘機に競争入札対象が絞られたと観られていた。ところが9月に入り、防衛事業庁はF-15SE採用を取り止め、入札を白紙に戻した。
その上で、作戦要求性能を修正し、ステルス性能や電子戦能力に関する入札条件の敷居を高くした。韓国国防省は入札期間を1年と見積もったが11月、このテコ入れでユーロファイターも脱落、F-35Aだけが契約対象として残った。競争契約が一転、随意契約に化けたのだった。背景には既に2011年、航空自衛隊が次期戦闘機として選定を決めていた事情がある。
国会内の一室に話を戻す。議員たちの発言を聴くと、日本に対する哀(かな)しいまでの過剰意識を感じる。朝鮮日報など、韓国系メディアを基に再現する。
当選6回の李仁済(イ・インジェ)議員はまず「ステルス性能は必要で(その意味でF-35Aの事実上の導入は)正しい決定だとは思うが…」と前置きした後、まくし立てた。
「日本に比べると導入条件が非常に不利だ。この問題は絶対に見過ごせない」
李議員は理由について「韓国は40機全てを完成状態で導入するが、日本は4機が完成品、残り38機はライセンス生産され、技術移転されるそうだ。事実なら、追加の話し合いを行ってでも、日本と同じく(より高額になるが)技術移転を推進していかねばならない」と説明した。
気持ちは分かる。でも「日本と同じく技術移転を推進して」も、自前の部品などを使い組み立てられるのかどうか。“実績”には事欠かない。
例えばF-15SEの旧型F-15K。2011年に、夜間の偵察・精密爆撃照準を可能にする装置を、米国防総省からのブラックボックス指定にもかかわらず開け、解体してしまったのだ。国防総省では国産兵器不拡散担当副次官補を急派し、怒鳴り込んだ。以後、米国部品を伴う装備の輸出は大きく制限された。韓国に対する供与兵器が内蔵するブラックボックスは、一層巧に偽装されてもいる。
F-15Kは06年、操縦士が対重力訓練の不足で失神し墜落。07年には地上移動中、マンホールに右主脚を落とし、大破した右主翼の修理を米ボーイング社に頼んだ。10年には、米韓合同訓練に参加する操縦士の“教育”のため、後部座席に座乗した空軍大学総長(少将)が誤って非常脱出用のレバーを引き、座席ごと大空に舞った。落下傘が開き閣下は無傷だったが、イザとなれば、韓国軍とともに戦う運命にある米軍は、韓国軍の技術力や錬度(れんど)に不信感をもっていることは間違いない。
「ブラックボックス破り」は、バレずに元に戻せることが大前提だ。元に戻せないからバレる。
ドイツが開発し、現代重工業でライセンス生産している潜水艦・孫元一(ソン・ウォンイル)。これまたブラックボックスを分解し、元に戻せなくなった、との観測は軍事関係者の間では常識だ。結果、ドックに3年近く入ったまま。潜水艦技術に長(た)けた日本に泣きついてきたとの話すらある。
李議員は「F-35Aが完成品として導入された場合、今後20年はメンテナンス費用として20兆ウォン(約1兆9600億円)以上が必要と見込まれるが、ほとんどが部品などを製造する費用として日本に支払われるのではないか」とも懸念した。
ステルス機は軍用機の中でも、とりわけメンテのインターバルが短い。アジアでのメンテナンス拠点は技術的に日本が注目されている。一方で、韓国空軍仕様のメンテは、できる範囲内で韓国で実施するとの見方もある。ただ、技術面での不安や、ブラックボックス破りの「前科」がある上、機密性の極度に高い第5世代機をまたもいじられる危険を嫌う米軍関係者の中には、米国送りを主張する声が大きい。
件(くだん)の国会内の一室において、セヌリ党の兪奇濬(ユ・ギジュン)議員は「次期戦闘機事業で、韓国と日本の軍事面における外交力の差が顕著に表れた」と語った。
やや違う。日本の「外交力」は経済力や国際的地位を考えると、まるで物足りない。同盟国・米国の日韓それぞれへの信頼度の差は「外交力」だけではない。背伸びをせず、着々と技術力を築いてきた「民族性」の差である。他国の部品で兵器や工業製品を「完成」させ、見て呉れを繕ってきた韓国。日本と自国を常に対比させる情念と、その結果としての焦りが、物理的にも、歴史の粉飾といった精神構造上も、国家ぐるみで見て呉れを繕う社会的常態を生み落としたともいえる。全体、日本という隣国が地球上に存在しなかったら、韓国は国家目標・戦略をどう位置付けただろう。
韓国軍関係者は2月、朝鮮日報に対し「日本も偵察衛星4基を保有しており、今後は10基に増やす。われわれは1基も持っていない」と述べ、保有に向け予算・技術の確保に乗り出す姿勢をにじませた。
また、フィリピンの台風被害で、韓国外務省は14年から3年間で2000万ドル(約20億6000万円)の無償援助を実施すると発表した。最初の発表額が「日本の1000万ドルに比べ少額」との批判的世論にも配慮した結果だった。
浪費せず、「日本離れ」できる成熟した韓国を見たい。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)