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タイ反政府デモ「民主主義の後退」 国内外から厳しい視線

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タイ反政府デモ「民主主義の後退」 国内外から厳しい視線

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タイの政治対立の構図=2013年12月8日現在、※タクシン・シナワット元首相、インラック・シナワット首相、アピシット・ウェーチャチーワ前首相、ステープ・トゥアックスバン元首相  【国際情勢分析】

 タイ国外に逃亡中のタクシン・シナワット元首相(64)を帰国に導く恩赦法の審議を機に11月に始まった反政府デモは現在も続き、今後の情勢は見通せない。だが、タクシン氏の妹、インラック・シナワット首相(46)が12月9日、下院を解散、来年2月の総選挙実施を宣言したことで、引き続き首相の辞任を求めて総選挙を受け入れないデモ隊の主導者、野党民主党のステープ・トゥアクスバン元副首相(64)の姿勢に対し、国内外から厳しい視線が寄せられ始めた。

 「利権のための闘争」

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)は12月10日付社説で、首相の下院解散を「分別のある行動だ」と評価した。社説は、民主党の下院議員約150人が(12月)8日、デモに合流するために辞職したことを「立憲民主制における衝撃的な展開」と表現した。また、首相は法的には残る議員の支持だけでも政権を維持できたとした上で、解散を選んだ判断を「責任ある方向を選んだ」とたたえた。

 一方で、政権の権力乱用を批判するステープ氏の主張については「高潔な見せかけの裏にあるのは、権力とそれに伴う利権のための闘争にすぎない」と断じた。特に問題視するのは、ステープ氏が国王による新首相の任命と反タクシン派主導の暫定政府「人民評議会」の設置を求めていることだ。社説はこの要求を「民主的制度の完全な転覆」と指摘。民主党が総選挙をボイコットしデモを継続したとしても、地方を中心に数で勝る与党タイ貢献党の支持者に勝利するのは、デモの面でも難しいだろうと予測した。

 インラック政権失政が要因

 ステープ氏の要求には、民主党への支持傾向が強いタイ英字紙ネーション(電子版)も厳しい。ネーションは12月11日付の社説で、「海外メディアは反政府デモを、人々が選挙で選んだ政府の転覆を試みるエリートの謀議の一部として描いている」として、デモを政争とみる見方を否定。都市の富裕層と地方の貧困層との闘争だとする理解も「真実を見過ごしている」とした上で、「ほとんどのタイ国民は腐敗した政府への不満によって団結している」とインラック政権の失政がデモの要因だと指摘した。

 特に、インラック氏が2011年の総選挙で公約し導入した事実上のコメ買取制度は、支持基盤である北部農村地域への「バラマキ」だとの批判が強い。国際通貨基金(IMF)は11月、買取制度による赤字がタイ財政への不信を招いているとして、制度の廃止を勧告する報告書を公表している。

 クーデターに道開く行為

 だが、12月10日付のネーションの社説は、ステープ氏による「人民評議会」の設置要求について、「選挙制度の枠外で暫定政権を任命する明確な法律の規定はない」と指摘。「わが国には選挙で選ばれない首相がいた長い歴史があるが、過去の独裁の記録がいかに悲惨なものだったかを再考すべきだ」とした。その上で、デモ隊への合流を決めた民主党の対応について「クーデターか、それと同等のものに道を開く行為で、(デモ隊が求める)『完全な民主主義』を助長するどころか、民主的な制度を弱体化させるものだ」と批判した。

 反タクシン派に近い論調で知られる英字紙バンコク・ポスト(電子版)も12月11日付の社説で、下院の解散により「ステープ氏の仕事は終わった」と主張。人民評議会は「独裁への回帰だ」と酷評した。

 ただ、タイの英字紙は両紙ともに、民主党を一方的に非難するのではなく、事態の根本的な打開に向け、与野党双方が政治改革に向けた協議を行うよう呼びかけている。ステープ氏は軍部の支持を得て首相の即時辞任と人民評議会の設立を実現したい意向だが、厳しい世論の動向を受けて、政権との対話路線に転じるかどうかが注目される。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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