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東電、新再建計画を提出 国費投入も柏崎刈羽再稼働にハードル
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東京電力と原子力損害賠償支援機構は12月27日、新しい総合特別事業計画(再建計画)を政府に提出した。柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)を再稼働させて収益を改善。希望退職は予定の1000人からグループ全体で2000人規模に増やす。新計画は来年1月に認可される見通し。
計画では、柏崎刈羽6、7号機を来年7月に、1、5号機を2015年春に再稼働させるが、07年の新潟県中越沖地震で止まったままの2~4号機については「未定」とした。再稼働が計画通りなら、毎年1500億円程度の経常利益を確保できるが、再稼働が大幅に遅れれば、電気料金の再値上げを検討する。
一方、社債発行の再開による資金調達が実現できれば、政府は保有する東電株の議決権比率を50%強から3分の1程度に引き下げ、最終的に保有株を売却して除染費用に充てる。
≪国費投入も柏崎刈羽再稼働にハードル≫
東京電力の新再建計画には、これまで東電任せだった廃炉や除染への国費投入が盛り込まれ、国が前面に出る姿勢を強調した。広瀬直己社長は12月27日、「国との役割分担が明らかになった」と評価したが、新計画実現の鍵を握るのは、あくまで柏崎刈羽原子力発電所の再稼働だ。東電は、地元、新潟県の泉田裕彦知事の同意という「高いハードル」をクリアしなければならない。
「東電任せのままでは何も解決しない。国が前に出るしかない」。経済産業省幹部は、政府の方針転換の理由をこう明かす。
引き金となったのは2020年の東京五輪の招致だった。
安倍晋三首相は9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、福島第1原発の汚染水問題に触れ、「状況はコントロールされている」と宣言。これを受け、経産省幹部からは「首相が世界に“公約”した以上、政府は本気で取り組まないといけない」との声が目立つようになった。
11月に自民、公明両党の東日本大震災復興加速化本部が除染などへの国費投入を柱とした提言をまとめ、国は、中間貯蔵施設の建設・運用に必要な1.1兆円を負担することにした。交付国債による東電への無利子融資枠も5兆円から9兆円に拡大された。
ただ、新計画実現の鍵を握る柏崎刈羽6、7号機の再稼働について、泉田知事は慎重な姿勢を崩していない。安全審査を通過しても、再稼働に知事の了解が得られる見通しは立っていないのが実情だ。
再稼働が実現せず、料金を再値上げすれば消費者や企業の反発を招く。除染費用を東電株の売却益でまかなおうとする国のシナリオも狂いかねず、再生への道のりは依然、険しい。(三塚聖平、藤原章裕/SANKEI EXPRESS)
≪後任会長に数土氏起用へ≫
政府が、東京電力の下河辺和彦(しもこうべ・かずひこ)会長(66)の後任に社外取締役の数土文夫(すど・ふみお)JFEホールディングス相談役(72)を起用する方向で最終調整に入ったことが12月27日、分かった。下河辺会長は来年6月の株主総会を待たずに退任する意向を関係者に伝えており、数土氏は来春にも新会長に就任する可能性がある。経営者として豊富な経験を持ち、東電の経営改革を進めてきた実績が評価された。
政府は来年1月に再建計画を認定する見通し。その後、東電の指名委員会での指名を経て、取締役会で正式に数土氏の会長就任が決定するとみられる。
数土氏はJFE社長やNHK経営委員会委員長などを経て、昨年6月に東電の社外取締役に就任。経営改革について積極的に発言し、福島第1原発事故の除染費用を東電に全額負わせるのではなく、国も一定の負担をすべきだと強く主張した。結果的に政府は今月(12月)、除染費用などの一部を負担する方針を決めた。(SANKEI EXPRESS)
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