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【欧州サッカー】ミランの「10」鮮烈デビュー 臆さぬ本田 夢は道半ば
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異例、破格の厚遇だった。
内外の記者200人以上を集めた本田圭佑(けいすけ、27)のACミラン入団記者会見。ガリアーニ副会長と並んで着席した会見場のバックには、「ウエルカム 10」とあり、なんと0の中には本田のシルエットが埋め込まれていた。
もっとも本田には、全く臆するところがない。英語で行われた会見では、「サムライ魂とは」と聞かれ、「本物のサムライには会ったことがない」と笑わせて会場を引きつけ、「日本男児は決して諦めない」と見事につないだ。
ミランの10番といえば、フリット、ボバン、ルイコスタ、セードルフといった世界のトップスターが背負ってきた特別の番号だ。他のビッグクラブで誰が10番の重責を担っているかといえば、バルセロナのメッシ、マンチェスター・ユナイテッドのルーニー、バイエルン・ミュンヘンのロッベンらの名が浮かぶ。本田は、彼らと同等の扱いを受けるのだ。
ミラン入団が決まったとき、クラブから複数の背番号を提示され、その中に「10番」もあったのだという。本田は「10番をつけるチャンスが目の前にあって、違う番号を選びますか」と話した。日本男児の評価には「控えめ」というのもあったはずだが、本田には無縁らしい。
望むポジションを聞かれ、「どこでもできるが、できればトップ下をやりたい」とも答えた。1月12日のサッスオロ戦の後半20分には早くも実戦デビュー。ブラジル代表のスピードスター、ロビーニョに代わって中盤右サイドに入るよう指示されたが、自ら宣言した通り多くの時間をトップ下の中央で費やし、下位チーム相手に逆転を許したミランはパスが回り出した。ポスト直撃のミドルシュートも放った。うるさ型の現地スポーツ紙は翌日、こぞって本田にチーム最高点をつけた。
本田が12歳の時に書いた作文「将来の夢」には「ぼくは外国から呼ばれてヨーロッパのセリエAに入団します。そしてレギュラーになって10番で活躍します」と書いた。
夢は半分かなった。だがまだ、レギュラーに定着したわけでも活躍したわけでもない。ただこの男なら、やってしまえそうに思えるのだ。
≪刺激受け目覚める日本代表≫
ACミランで10番を背負った本田には、多くの選手が刺激を受けている。同じミラノを本拠地とするインテル・ミラノの長友佑都(ながとも・ゆうと、27)は本田のデビュー戦翌日の1月13日、ホームのキエボ戦で今季5点目となる同点ゴールを決めた。直後には幻の決勝ゴールもあったが、無情にもオフサイドの判定。長友も残念がったが、いまや中盤左サイドで欠かせぬ存在だ。
セリエAでもミラノでも本田の先輩となり、日頃から仲がいいことでも知られるが、本田の存在は「もちろん刺激になる」と話す。
本田のデビュー戦前日の(1月)11日には、一足早くビッグクラブ入りした英プレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッドの香川真司(24)がスウォンジー戦にフル出場し、2-0の勝利に貢献した。
日本代表では香川が10番。だが希望するトップ下には本田が定着し、左サイドでのプレーに終始している。マンUでもこの日は左サイドで先発したが、途中からトップ下に入り、縦横無尽に走り回ってチームの心臓役となった。
後半2分のヘディングシュートはGKにはじかれたがバレンシアの2点目を生み、ドリブルでGKをかわしたシュートがDFに防がれる惜しいシーンもあった。
今季初得点はならなかったが、それでも「きょうは楽しかった。トップ下は本当に自由にやれる。自分に合っている」と会心の笑みをみせた。監督交代で出番が減るなか、ようやく自分のプレーができた安堵(あんど)感だけではなく、本田に集まる注目から受ける刺激もあったはずだ。
本田がミランで10番をつけようがつけまいが、好調をキープしている選手もいる。
ドイツ・ブンデスリーガ、マインツの岡崎慎司(27)だ。クリスマス休暇前の昨年(2013年)12月21日、3-2で快勝したハンブルガーSV戦では2得点1アシストで全ゴールにからみ、リーガ公式ホームページで第17節の週間MVPに選ばれた。
前半戦を終えて8得点の大活躍。岡崎は本田や香川を抑えて、ザッケローニ・ジャパンの得点王でもある。どこへでも頭から突っ込む勇気あるプレーは、日本代表でもマインツでも同じ。加えて駆け引きの巧妙に磨きをかけている。
彼らの切磋琢磨(せっさたくま)が、ブラジルW杯で日本に歓喜を呼び込むことを信じたい。(EX編集部/撮影:ロイター、共同、AP/SANKEI EXPRESS)