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「反日の聖地」に安重根記念館 中韓に温度差…漢族ほとんど興味なし
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初代韓国統監だった伊藤博文を暗殺した朝鮮半島出身の安重根(アン・ジュングン)の記念館が1月19日、暗殺事件の現場となった中国北東部のハルビン駅に開館した。韓国外務省が19日、報道資料で明らかにした。
聯合ニュースによると、記念館はハルビン市と、ハルビン市鉄道局が駅の貴賓室の一部約200平方メートルを改造し設置した。事件現場のホームが直接見えるように設計され、安の生涯や事件に関する資料、写真を展示し、一部の展示物にはハングルの説明文も付けられているという。
聯合ニュースは開館を「電撃的」と報道。中韓両国が「水面下で調整してきた」とし、記念館の工事も秘密で進められ、19日の開館式には黒竜江省の副省長をはじめ中国側の人々だけが参加したと伝えた。
韓国外務省は報道資料で「(韓国政府は)韓中両国民から広く尊敬される安義士の記念館が義挙の現場に設置されたことは意味がある」と歓迎を表明し、「これを契機に北東アジア地域の国家が安義士が主張した『東洋平和論』の崇高な精神を振り返り、正しい歴史認識に基づく真の平和・協力の道に歩み出すことを期待する」とコメントした。
また、日本に「正しい歴史認識」を持つよう要求した。中韓が日本側の歴史認識に共同で対抗する意図があるとみられる。
朴槿恵(パク・クネ)大統領は昨年(2013年)6月の訪中時、中国の習近平国家主席に記念碑設置の協力を要請。習主席側が関係部署に検討を指示していた。(ソウル 加藤達也/SANKEI EXPRESS)
中国ハルビン駅に初代韓国統監の伊藤博文を暗殺した安重根(アン・ジュングン)をたたえる「安重根義士記念館」が開館し、昨年(2013年)6月の首脳会談で石碑建立を求めた韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の直訴に中国の習近平国家主席が応えた形となった。韓国政府が記念館を「反日の聖地」とし、慰安婦問題を含む歴史認識問題で対日攻勢をさらに強めるのは確実だが、中国外務省は開館を大々的に発表しておらず、中韓の温度差をうかがわせた。
韓国外務省が開館を発表すると、韓国メディアは1月19日夕のニュースで一斉に報じた。一方、中国側は国営新華社通信が「外交ニュース」として淡々と伝えるにとどめた。
国営新華社通信は、安重根を「朝鮮半島の近代史上、著名な独立運動家」「反日運動に身を投じた」と紹介している。開館式であいさつした黒竜江省の孫堯副省長は「歴史を心に刻み、過去を反省し、未来を展望することが目的だ」と述べて直接の日本批判は避けた。
もともと中国側は記念碑などの設立に消極的だったとされる。北東アジア史を専門とする中国人学者は、異民族の要人暗殺をたたえることで、チベットや新疆ウイグル自治区の治安に悪影響を及ぼす恐れを指摘。抗日戦争で戦死した中国の“英雄”を差し置いて、外国人の記念碑を設置することへの軍人や保守派の反発も懸念されていた。
ハルビン市内の朝鮮民族芸術館内にはすでに2006年7月、「安重根義士記念館」が設置されているが、観覧者の8割が韓国人。漢族の中国人はほとんど興味を持っていないというのが現実だ。
ただ、安倍晋三首相の靖国神社参拝などで中国側が日本への反感を強め、消極姿勢から一転して記念館建設にゴーサインを出した可能性も否定できない。
韓国側は、記念館設立を朴氏が求めた石碑からの「格上げ」と宣伝。記念館の開館で中国を味方に付けたと判断し、歴史認識問題で対日共闘に自信を強めているとみられ、今後、中韓が連携して対日包囲網を形成することも予想される。(北京 川越一、ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS)