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科学
日本の科学技術力の発展 大和田潔
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大阪大学がカタールで再生医療の拠点を作ることが発表されました。体の筋肉から心筋を培養し、弱った心臓に貼るシートを作ったり、口の粘膜の細胞から目の治療に使う角膜のシートを作ることを目標にしているそうです。
私は、子供のころ学校で「日本は資源がないので海外から原材料を輸入してそれを加工して輸出する国です」と教わりました。このニュースは、日本の未来の可能性を示唆しています。子供たちの教育や国のインフラに投資してきたのは、先人たちの慧眼(けいがん)でした。その結果、優秀な国民たちが整えられた研究設備を使い、人に頼ることなく新しい技術を次から次へと作り出す国へと成長しました。
資源とは何でしょう。私たちは、石油や鉄鉱石、レアアース、シェールガスなど地球が用意したものを思い浮かべます。同時に、冒頭の医療技術も大きな「資源」です。新幹線やリニアモーターカー、ロボット制御、船や建築物を造る力。さまざまな技術を日本は開発してきました。地球にある資源は、常に枯渇する懸念がありますし、環境破壊につながります。技術力や科学力は人の脳から無尽蔵に生まれて、無限の応用性の可能性を秘めています。枯渇することはありません。敗戦の反省に立ち、人を傷つける武器開発の科学ではなく、人の役に立つことを基軸としてきました。
医療分野においては、iPS細胞の発明とともに再生医療の技術が花開くところです。その技術をもって海外に拠点を作るというニュースは、心躍るものです。日本の技術で、世界の方々の心肺機能が回復して歩けるようになったり、見えなかった人の目に光がよみがえったりする日も近いでしょう。
レアアースの輸出が制限されると、日本の研究者はレアアースを使わないで済む技術を開発しました。ジスプロシウムフリー磁石合金というものです。資源に乏しいという弱点を逆手にとって頭脳で未来を作るという覚悟。そういった厳しさは、かえって物事を前に進め、新しい未来を作る推進力となります。ソフトウエアのかたまりの医療技術は、ハードウエア依存からの脱却も意味します。今年も、日本の科学技術の大きな飛躍が期待できそうです。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)