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【にほんのものづくり物語】箱根寄木細工

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【にほんのものづくり物語】箱根寄木細工

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 ≪伝統に培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫

 天下の険と唄われた箱根。その山深く樹種も豊富な地は世界一の小木工技術の集積地として知られます。江戸時代、東海道の整備により湯治土産などとして広まり、その後漆器や陶器とともに輸出品として海外にも渡った箱根寄木(よせぎ)細工。その伝統に「無垢(むく)の寄木細工」の手法を確立し、工芸品としての新風を送り込んだ人物がいます。

 今回は箱根旧道畑宿にある金指(かなざし)ウッドクラフト、金指勝悦(かなざし・かつひろ)さんを訪ねました。

 新年の風物詩として多くのファンを持つ箱根駅伝の往路優勝トロフィーは、箱根寄木細工で作られていることをご存じでしょうか。2014年は、開催回数を表す90の層と、映り込む逆さ富士を表現した台座に聖火のように据えられた富士山のデザイン。美しい木で作られた複雑な文様、斬新さと繊細さを併せ持つ作品は、従来の寄木細工の概念を覆す力強さで何かを語りかけてくるようです。

 作者の金指さんは1959年、寄木細工職人の数が激減し、伝統技術の衰退が危惧されていた時代に、この世界に入りました。当時の寄木細工は、色や木目の異なる木片を寄せ合わせて幾何学模様の種板をつくり、その表面を薄く削り出してできる「ズク」を、箱や花器などの木製品に貼り付けて模様や絵柄を楽しむものが主流でした。親方たちから、しっかりと基礎をたたき込まれながら、「人がやらないことをやってみたい」そればかりが頭にあったそうです。

 親方のもとを離れ、下請けから独立した金指さんは、あえて寄木を施した木材から、ろくろや刃物を使って加工する「無垢の寄木細工」で独自路線を歩み始めます。以来今日まで「無垢」一筋の道を貫いてきたのは、常に持ち続けた「人と違うことを、常に新しいものを」というフロンティア精神です。これまでの技法ではできなかった曲線の表現、形は同じでも種板の切り出し方によって、一つ一つ表情を変える作品。「無垢」の技法は伝統に新たな側面を加えました。

 箱根寄木細工は84年に国の伝統的工芸品に指定されましたが、現在、技術者は約50人。他の伝統工芸品と同様、後継者育成は急務といえます。しかし、金指ウッドクラフトでは、木々の微妙な色合いがつくる、ダイナミックでモダンな「無垢」の模様に惹(ひ)かれ、全国から若者たちが集い、そして巣立っていきます。

 商品化の依頼も多くあるのですが「工芸品」としての自負は、同じものをたくさん作ることには結びつかないのです。そんな中、ある香りのブランドとのコラボレーションが実現しました。手のひらに収まる丸形の一輪挿しがアロマのディフューザーに変身をしたのです。以前から要望のあった大きさの器たちに金指さんも満足顔。柔軟な感性はさまざまな要望も受け止め、形にしていくのでしょう。

 その感性は素材にも生かされています。木質の堅いものを選ぶ寄木にあえて柔らかな杉を選んだ箱は、しっとりと吸いつくような肌触り。他の素材とは一線を画すぬくもりを伝えてきます。間伐した杉を使った「eco」な発想は時流にのり、広がるのではと思うのですが、感性と技術と効率のバランスはなかなか難しく「他の人はやらないよ」というのは、とても残念でなりません。

 最近では地元の小学校で、植林→伐採→加工という過程を教える教室を担当し、自然を大切に共存していく考え方を教えているのだそうです。73歳という年齢を感じさせず、常にチャレンジを忘れない、すてきな先生に教えを受けた子供たちが、伝統と革新を温め未来にどうつなげていくのかが楽しみです。(SANKEI EXPRESS (動画))

 ■かなざし・かつひろ 伝統工芸士。1940年、神奈川県箱根町畑宿生まれ。衰退の一途の寄木細工を土地の諸先輩より学び、伝統の技に新しさをと、独自の手法・デザインで無垢の寄木細工一筋の道を歩む。全国木のクラフトコンペ大賞受賞、その他、大臣表彰をはじめ、多数受賞。97年~現在 箱根町の依頼により箱根駅伝往路優勝トロフィーを制作。2013年、瑞宝単光章を授章。

 【問い合わせ先】

株式会社金指ウッドクラフト

〒250-0314神奈川県箱根町畑宿135 (電)0460・85・5567、(FAX)0460・85・9203。E-mail:kanazasi@eagle.ocn.ne.jp

株式会社グランデュール

 香音リードディフューザー・寄木細工「四季の香り(アロマオイル)」100ミリリットル。桜/百合/金木犀/梅(4種・参考商品)。(電)045・847・1683。www.grandeur-gd.co.jp/

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