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科学
バレンタインと「恋心スイッチ」 大和田潔
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女性が恋心を伝えるバレンタインデーも近くなりました。年始のNHKニュースで「“恋のスイッチ”の神経細胞 メダカで発見」という科学ニュースが紹介されました。竹内秀明助教(東京大学大学院)がサイエンスという権威ある科学雑誌に発表しました。
ガラス越しにオスとメスのメダカをお見合いをさせると、メスはオスを見分けて覚えます。一度お見合いしているメスは、記憶しているオスの求愛行動を受け入れやすくなります。そこで、お見合いしたメスの脳の変化を調べてみると、脳の特定の神経細胞が活性化していることがわかりました。さらに、脳のその場所を人工的に活性化すると、メスがオスの求愛行動を受け入れやすいこともわかりました。そこで彼らは、その神経細胞を「恋心のスイッチ」と名付けました。
「こころ」というと、私たち人間に確実に存在するものの、何か漠然とした、とらえどころのないものと感じています。ドラマや映画で、心ない機械やロボットと心を持つ人間の戦いが取り上げられることもよくあります。恋心となると、さらにわけのわからないものと考えられています。小説や歌謡曲でも、「なぜだかあの人を愛してしまった」とか「恋心は止められない」という人間の葛藤が描かれ、人々の共感を得ます。
複雑に見える恋心も、メダカではシンプルな脳の神経メカニズムで説明できるかもしれません。「脳の機械論」といった側面から、今回のメダカの研究は興味深い結果です。病理標本で人間の脳を観察すると、神経細胞やそれを支える細胞たちが整然と並んでいます。層状に重なったり、神経細胞の密度が濃い部分が島状に存在したりする鮮やかで美しいミクロの風景です。
脳のなせることは、全てこれらの神経細胞の活動の発露です。人に出会い、その人の姿を覚え、恋しく感じる。その一連の作業は、脳による作業なのです。
バレンタインデーは、女性がチョコレートを男性に渡す記念日です。かわいらしい甘い贈り物は、女性の恋心の意思表示とも考えられますが、男性脳の「恋心スイッチ」神経を活性化させる可能性も秘めているのかもしれません。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS (動画))