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集団的自衛権の行使容認へ「自然体」

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集団的自衛権の行使容認へ「自然体」

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2月12日の衆院予算委員会で集団的自衛権の行使容認についての質問に答える安倍晋三(しんぞう)首相=2014年(酒巻俊介撮影)  【安倍政権考】

 安倍晋三首相が集団的自衛権の行使容認に言及する機会が増えている。首相は今の通常国会で憲法解釈の変更に踏み切り、今年秋には関連の法整備に着手するスケジュールを描いている。首相の発言を注意深く分析すると、浮かんでくるのは集団的自衛権の限定的な行使容認だ。

 「私が最高責任者だ」

 「国際情勢の変化の中で、もう一度よく考えてみる必要がある。(政府の)最高責任者は法制局長官ではない。私だ。私が政府の答弁に責任を持っている」。首相は2月12日の衆院予算委で、憲法解釈の変更に重ねて意欲を示した。首相は(2月)10日の衆院予算委では「北朝鮮が米国を攻撃し、北朝鮮に武器弾薬が運ばれている。輸送を阻止できるのに阻止しなくていいのか」と、朝鮮半島有事を例に挙げて集団的自衛権が行使できない現状に対する問題認識を示した。

 首相の諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は4月にも集団的自衛権の行使を容認する報告書を提出する見込みだ。首相周辺は「今国会で解釈変更に踏み切り、閣議決定に持ち込む」と語る。

 こうした中、首相は(2月)5日の参院予算委で、集団的自衛権の行使に向けて3段階の手続きを踏む必要があるとの認識を示した。まず、憲法改正ではなく、憲法解釈を変えて集団的自衛権を行使できる環境を整える。次が憲法解釈の変更に伴う法整備だ。自衛隊の出動要件を定めた自衛隊法などの改正が対象となる。

 最後に集団的自衛権を実際に行使するかどうかの政策判断を個別的に下すことになる。日本近海の公海で米艦船が攻撃を受けたら、近くの自衛艦が反撃することはあっても日本から遠く離れた海域の場合には、行使を見送る可能性もある。ケース・バイ・ケースで判断するということだ。

 個別的自衛権の拡大で国際情勢の変化に対処できるとの声もあるが、首相は(2月)10日の衆院予算委で「国際法学的にはかなり異端だ」と真っ向から否定した。

 一方、首相は集団的自衛権行使の対象となる国に関しては微妙な発言をしている。日本が同盟を結んでいるのは米国だけ。対象は米国のみだと思われがちだが、首相は「同盟関係ではなくても自国と密接な関係にある国に対しては、集団的自衛権の権利を持っている」と述べ、米国だけだとは断定していない。

 同盟国以外も対象か

 外務省幹部は「首相の念頭には韓国があるのだろう」と読み解く。また、防衛省幹部は「あえて明言しないことで、日本の仮想敵国に対する無言の抑止力となる」と語る。

 ただ、首相は無制限に集団的自衛権を行使することを明確に否定している。首相は(2月)10日の衆院予算委で、「(安保法制懇では)相当限定的に議論されている。全体的に認めるということはない」と述べた。

 第2次安倍政権発足に伴って再開された安保法制懇では一時、全面的な解禁を求める声も出たが、首相は「憲法9条の制約は個別的自衛権にもかかっている。集団的自衛権にも制約がかかっているだろう。この制約をどう考えるかがテーマだ」としている。

 政府は自衛権発動の3要件として、(1)わが国に急迫不正の侵害がある(2)他に適当な手段がない(3)必要最小限の実力行使にとどまる-を挙げている。与党の公明党が集団的自衛権の行使に難色を示す中、行使を認める場合でも必要最小限にとどめるということだ。

 今国会の会期末は6月22日。4月の消費税引き上げなどを受けて野党が攻勢を強めてくることが予想され、国会論議の行方を心配する向きもいる。しかし、首相はこう漏らしている。「あくまでも自然体で臨むだけだよ」(笠原健(たけし)/SANKEI EXPRESS (動画))

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