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【フィギュア】「最高の演技」真央の恩返し フリー自己ベストで6位

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【フィギュア】「最高の演技」真央の恩返し フリー自己ベストで6位

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フリーの演技終了後、涙と笑顔を見せる浅田真央(まお)。ショートプログラム(SP)16位の衝撃から気持ちを切り替え、高難度の構成を演じ切った浅田には、しのぎを削ってきたスケーター仲間からも惜しみない称賛の声が上がった=2014年2月20日、ロシア・ソチのアイスベルク・スケーティング・パレス(大里直也撮影)  「これぞ浅田真央」という渾身の演技を見せ、最後のポーズを決めると、あふれ出る涙が止まらなかった。ソチ冬季五輪第14日の2月20日(日本時間21日未明)、フィギュアスケート女子のフリーが行われ、前日のショートプログラム(SP)で16位と出遅れた浅田真央(23)=中京大=は驚異的な追い上げを見せ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させるなどフリーで自己最高となる142.71点をマーク。フリー3位となり、合計198.22点で6位に順位を上げた。

 鈴木明子(28)=邦和スポーツランド=は前回と同じ8位入賞。村上佳菜子(19)=中京大=は12位。アデリナ・ソトニコワ(17)=ロシア=が世界歴代最高に迫る149.95点をマークし、合計224.59点でSP2位から逆転優勝を果たした。SP首位の金妍児(キム・ヨナ、23)=韓国=は2位に終わり、史上3人目の連覇はならなかった。

 完璧な3回転半

 こみ上げる感情を抑えることができなかった。浅田は演技を終えた直後から止まらなくなった涙を何度もぬぐった。前夜の悔し涙ではない。そして、観客席に一礼する時に必死に浮かべた笑顔は万感の思いにあふれていた。

 まだ会場が熱気を帯びていない前半の12番滑走で、経験がないSP16位の悪夢を振り払った。冒頭に跳んだ一発の大技で演技に引き込んだ。「自分にしかできない」とこだわり続けたトリプルアクセルを完璧に着氷。五輪では1992年アルベールビル大会銀メダルの伊藤みどり(44)と浅田しか跳んでいない大技を、公式戦では約1年ぶりに成功させた。

 「アクセルが決まり、『よし』って思った。緊張もあったが、このままいけると思った」

 SPで大崩れした前夜は寝付けずに珍しく寝坊して練習時間にわずかに遅れた。待っていたのは、2010年秋から師事する佐藤信夫コーチ(72)の叱咤だった。「SPの得点は70点くらい。フリーは140点ある。まだ3分の1しか終わっていない。気合を入れなさい」。抜け殻だった心身にもう一度、闘魂が宿った。

 「6種類」逃す

 4年前は入れることができなかった3回転ルッツは惜しくも踏み切り違反を取られ、トーループも回転不足に終わった。トリプルアクセルを2本から1本にしたときに誓った五輪の女子で初となる全6種類(難度順にアクセル、ルッツ、フリップ、ループ、サルコー、トーループ)の3回転はあと一歩で逃した。しかし、SPとフリーで計3度、トリプルアクセルを成功させ、ギネス世界記録に認定され前回のバンクーバー五輪に続き、今回も画期的な挑戦で「ジャンプの浅田」を再び印象づけた。ジャンプなどの要素の難しさを示す基礎点の合計では66.34点で、フリーに出場した24人でトップだった。

 浅田は試合後、「きのうはすごく悔しい思いをしたが、きょうは自分の中での最高の演技ができた。そういう意味では、(悔いが残る演技で銀メダルに終わった)バンクーバーの演技へのリベンジはできたし、たくさんの支えてくれた方々に自分なりの恩返しができたと思う」と語った。そして、これからの4年間について問われると「今は後のことは考えていない」と答えた。

 5歳から始めた挑戦は終幕を迎えたのかもしれない。だが、幕は下りても、この日浅田が見せた気迫のフリー演技が残した価値は計り知れない。多くの国民の記憶に永く刻まれ、続く後輩や子供たちを大いに奮い立たせたに違いない。(SANKEI EXPRESS (動画))

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