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「電子たばこ」役立つ?有害? 高校生ブームで懸念、米国で論争
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世界的に愛用者が急増している、煙の代わりにニコチンを含んだ蒸気を吸引する「電子たばこ」への逆風が強まってきた。米国ではロサンゼルスの市議会が3月4日、レストランやバーなど公共の場での喫煙を禁止する条例を全会一致で可決した。
ニューヨークやシカゴ、ボストンでも同様の条例が成立済み。高校生ら未成年者の間で人気となり、依存症などによる健康被害が懸念されているためだ。これに対し、たばこ業界からは、「従来の紙巻きたばこよりも害が少なく、禁煙にも役立つ」と反発の声が上がり、論争も巻き起こっている。
「われわれには、発がん性物質が見つかった電子たばこの蒸気から若者を守り、受動喫煙から人々を守る責務がある」。ロサンゼルス市議会のミッチ・オファレル議員は、米メディアに条例の意義をこう強調した。市長が数日内に署名し成立する見通しだ。
昨年(2013年)12月にニューヨークで従来のたばこと同じように電子たばこの公共の場での喫煙を禁止する条例が成立したのを皮切りに、シカゴやボストン、シアトルなど約100都市が追随。州レベルでも、ニュージャージー、ユタ、ノースダコタなど5州で規制が導入された。
電子たばこはバッテリーの熱でニコチンを含む液体を蒸気にし吸引する仕組み。米ABCテレビ(電子版)によると、この10年でニコチンの強い紙巻きたばこから乗り換える人が急増し愛用者は全米で約4000万人に達した。
本体価格は30~100ドル(約3000~1万円)で、交換用カートリッジの年間費用が紙巻きたばこの約6割の約600ドルと安いことも普及につながった。紙巻きたばこと違い、テレビCMなどの広告の規制もない。
現在、約1000億ドルの米たばこ市場のうち電子たばこは、1~2%にとどまっているが、10年後には紙巻きたばこを上回るとの試算もあり、急成長が見込まれている。
問題なのは、高校生の間で、「おしゃれでかっこいい」と電子たばこがブームになり、未成年者の喫煙が急増していることだ。メーカー側もメロンやブルーベリーといった若者向けの味わいの製品を売り出している。
このため、若者たちが自覚のないまま“ニコチン依存症”となり、いずれ紙巻きたばこの喫煙者になってしまうと懸念されている。NYのクリスティン・クイン市議会議長は「本格的な喫煙のきっかけとなる」と主張する。
縮小一途の紙巻きたばこに代わる救世主と期待してきた、たばこ業界にとって、規制強化は大打撃だ。最大手メーカーのNJOYは5日、ロサンゼルス市議会の可決について、「科学的根拠に基づかない決定だ」と、反発した。
たばこ業界と深くつながる米共和党も反発。AP通信によると、ウィスコンシン州の共和党上院議員や保守派の医師らは5日、「電子たばこの蒸気は紙巻きたばこの煙より害が少なく、禁煙にも大きな効果を発揮する」と批判した。
ただ、欧州ではスイスやスペインが公共の場での喫煙を禁止する規制を導入。欧州連合(EU)も規制を強化する方針だ。
米国でも今後、連邦政府レベルでの規制が検討される見通しで、逆風はやみそうもない。(SANKEI EXPRESS)