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愛媛県・青島 のんびり 瀬戸内海の「猫島」
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日当たりのよい階段は猫たちの「五段ベッド」=2014年3月17日、愛媛県大洲市長浜町の青島(尾崎修二撮影) 定期旅客船が港に到着して乗客が桟橋に降り立つと、十数匹の猫が「朝ご飯ちょうだい」とでも言いたげに近づいてきた。気づくと記者の足元には、数匹の茶トラが。人間を恐れる様子はほとんどない。
瀬戸内海西部の伊予灘に浮かぶ青島(愛媛県大洲市長浜町)の港で、毎朝繰り返し見られる光景だ。この島はなんとたった15人の島民に対して100匹を超える猫が暮らす「猫島」なのだ。
昨秋、インターネットなどを通じて噂が広まり全国から猫好きを中心に観光客が訪れるようになった。高齢者が多くを占める島には宿泊施設や飲食店はおろか、自動販売機さえ無いが、「猫口(にゃんこう)密度」の濃さに引きつけられる猫好きの来島が後を絶たない。
大洲市にある長浜港から出船する定期旅客船「あおしま」は、午前と午後の1日2往復。約35分で青島に到着する。
島で漁師を営む紙本英則さん(63)は「猫は好きでも嫌いでもないよ」と言いながらも「なんだかんだ言っても、ね」と猫好きの顔をチラリとのぞかせる。その時、桟橋前広場に干してあるヒジキの上を歩く猫に向かって「コラッ!」と一喝。猫は一向にひるむ様子もなく「ヒジキのじゅうたん」から立ち去った。「しょうがないなぁ」と苦笑する。
≪観光客殺到 思わぬ人気に揺れる島≫
猫たちを話し相手にのんびりと暮らしていた島のお年寄りの中には、怒濤(どとう)のごとく押し寄せる観光客に圧倒され、外出を控える人もいるという。
猫たちが観光客の後を追うのは、節度の無い餌やりが原因だ。船着き場周辺の餌やり禁止エリアで、大量のドライフードをばらまく女性を見かけた。「定期的に来て猫たちに餌を与えている」と言う。「餌やり場が向こうにありますよ」と伝えても「あ、そう」ととりつく島もない。
行政がほとんど機能していないため、来訪者への注意喚起が徹底できないのが現状なのだ。
道端に捨てられた清涼飲料の空き缶や食品の包み紙などを目にすることもしばしば。ごみを持ち帰らない人もいる。
さらに「船の便数が少ない」「島の設備が不十分」などという、見当外れの苦情を訴える観光客もいるという。定期船の定員は34人。午前便で渡った客の帰りも考えると、午後便には当然定員を上回る人数が乗る可能性もある。土日ともなると20人以上の「積み残し」を生じてしまう。「心苦しいけどどうにもならん」。定期船のスタッフは頭を抱える。
普段はローテーションで「あおしま」の船長として働く石井京司さん(54)は青島在住。「玄関の引き戸を開けて家の中に入ってくる猫もいる。夕食用にテーブルに置いた鯛をくわえて逃走する強者(つわもの)もおったね」と苦笑いする。
温暖な瀬戸内海で、おおらかな島の人々に見守られてきた猫たちは、冬を越せずに数を減らしても、暖かい春には新しい命を育む。
帰りの船に乗る前、桟橋で猫を見ながら紙本さんの言葉を思い出した。「ゴールデンウイークが怖いよ…」
猫たちが大歓迎してくれることは間違いないが、穏やかな島の暮らしの妨げになるようなことのないよう、マナーを守ることを徹底したい。(写真・文:写真報道局 尾崎修二/SANKEI EXPRESS)