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彫刻家・名和晃平さんの世界 NYに芽吹いた「GOLD TREE」

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彫刻家・名和晃平さんの世界 NYに芽吹いた「GOLD TREE」

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コム・デ・ギャルソン_チェルシー店の改装作業の最中、ツリーの突端の最終調整を行う名和(なわ)晃平さん=2013年12月17日、米ニューヨークのチェルシー地区(中尾由里子さん撮影)  【アートクルーズ】

 世界経済の中枢であり、ファッションと芸術の街、ニューヨーク。マンハッタン南西部に位置し、最新アートの発信地でもあるチェルシー地区に昨年(2013年)12月20日、日本を代表するデザイナー、川久保玲さんの店「COMME des GAR?ONS CHELSEA」がリニューアルオープンした。1999年のオープン以来初のリニューアルという。

 店の入り口近くには高さ3.5メートル、店を入った奥には今にも天井を突き抜けそうに巨大な5.3メートルのツリーがそびえ立っていた。モノトーンを基調とした服が占める店内で、ゴールドの壁面に寄り添うようにそびえ立つツリーもまたゴールドの異彩を放っていた。

 「大きい木の方はまるで威厳がある『Father(父)』。そして小さい木は、生命力にあふれ、芽吹く子供のようで『Son(息子)』であるように感じます」。2本のツリーの生みの親である彫刻家の名和晃平さん(38)は、オープニングレセプションでこう語った。「川久保さんを人として、また、もの作りの姿勢や作品をリスペクトしているので、彼女にとっても最も大切というチェルシー店で作品を作らせていただいたことは本当に光栄でした」

 チェルシー店のリニューアルに際し、川久保さんが名和さんに依頼した作品のテーマカラーは、ゴールド。しかも大小2つ。「あくまでも服が主役なのであまり主張し過ぎないものを」という注文も伝えられた。2人のコラボレーションは、2011年のパリコレクションで名和さんがヘッドドレス(髪飾り)を制作したのが初めてで、今回が2回目になる。

 「最後の最後まで予想がつかないところが面白かった」と名和さんは振り返る。当初はテーマカラーのゴールドをどうやって表現したらいいのか模索した。さまざまな材料を試した結果、最終的に温度や湿度によってできあがる気泡の大きさが変化する発泡ウレタンに目をつけた。

 リニューアルオープンの3カ月前の昨年(2013年)9月、埼玉県内の茶畑に囲まれた造形スタジオで、名和さんは防護服をまとい、マスクをかぶって作品のサンプル作りに精を出していた。

 ≪生命力・冒険心 「少年のように」変身≫

 発泡ウレタンは通常、住宅の断熱材に使われる。名和晃平さんは回転台の上に乗せた発泡スチロールの固まりに、スプレーガンを使ってさまざまな角度から素早く発泡ウレタンを吹き付けていった。スプレーガンはそれにつながれたホースと合わせると重さが10キロ以上はある。かなりの力仕事だ。マスクを外すと、名和さんの額から玉のような汗が吹き出た。

 発泡ウレタンの質感やゴールドの色味を試すなどありとあらゆるサンプルを作った。そして、最終的なプレゼンで決まったのは、ランダムに裁断された発泡スチロールの断片に発泡ウレタンを吹き付け、ボコボコとした気泡で表面を作り、そこにくまなく本物の金粉を混ぜたゴールドの塗料をコーティングしていくという手法だった。表面に一切の塗り残しがないように、美術学生や造形家、塗装職人など大勢を動員して、まさに人海戦術で日夜寝る間を惜しんで、塗り続けた。さらにそれを木の形へと造形していった。

 そして12月、ニューヨークのコム・デ・ギャルソン チェルシー店に、名和さんと2本のゴールド・ツリーが姿をみせた。

 小さい方のゴールドツリーは当初、服が主役であることから少し控えめに作られた。だが、オープン2日前にそれを見た川久保さんは「もう少しボリューム感が欲しいわね」。その一言で、名和さんは、改装工事が大詰めを迎えた店内で、何時間もかけてツリーに手を加えていった。最終的に小さい方のツリーは、フランス語のコム・デ・ギャルソンが意味する「少年のように」生まれ変わった。当初、ツリーの頂上から天井までの空間は20センチほどあったが、変身後は天井まであと1.5センチに迫っていた。

 子供の木は、あふれる生命力や冒険心に身を任せ、そのまま天井を突き抜けて、摩天楼に囲まれたニューヨークの空まで伸びていきそうだった。その勢いが名和さんの姿と重なった。(写真・文:フォトグラファー 中尾由里子/SANKEI EXPRESS

 ■なわ・こうへい 1975年、大阪府生まれ。京都市立芸術大大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了。彫刻家、京都造形芸術大学准教授。「セル」という概念を機軸に、多様な表現を展開。2009年よりクリエイティブプラットフォーム「SANDWICH」を京都に立ち上げる。

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