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「欧州と親密になれ」 最強パンダ外交官の使命 習主席、ベルギーで“視察”

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「欧州と親密になれ」 最強パンダ外交官の使命 習主席、ベルギーで“視察”

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ベルギー・首都ブリュッセル  中国にとって、世界各国に約50頭を貸し出しているパンダは、最もかわいくて優秀な“外交官”だ。欧州歴訪中の中国の習近平国家主席(60)は3月30日、最終訪問国のベルギーで、今年2月に貸与したパンダのつがいの“仕事ぶり”を視察した。首都ブリュッセルに欧州連合(EU)本部があるベルギーと親密になり、最大の貿易相手であるEUとの経済関係を強化することが、パンダ外交官の使命だ。ただ、飼育する動物園の場所をめぐり、オランダ語圏の北部とフランス語圏の南部の地域間対立をあおったという経緯もあり、露骨な“パンダ外交”への不信感もある。

 ベルギーで仕事ぶり視察

 「ベルギーの子供たちが2頭のパンダを好きになってくれると同時に、中国と中国文化も深く愛してくれることを願っています」

 ロイター通信やフランス通信(AFP)などによると、ベルギー南部ブルジュレットにある自然公園「パイリダエザ」で、飼育施設の完成式に出席した習主席は、こうあいさつした。

 式典には彭麗媛(ほう・れいえん)夫人(51)を同伴し、ベルギーのフィリップ国王(53)夫妻も出席。習主席はつがいのパンダについて、「オスの『星徽(シンホイ)』が光、メスの『好好(ハオハオ)』が善という意味で、中国と欧州間の友情と協力を証明している」と説明し、“友好”を強調した。

 いずれも4歳で、貸与期間は15年間。4月3日から一般公開される。ベルギー紙によると、パンダの飼育施設整備に約1000万ユーロ(約14億円)を投じ、毎年中国側に約100万ユーロを支払うという。それでも、来園者の増加などにより「採算が合う」としている。

 実際、(3月)23日にパンダがベルギーに到着した際には、エリオ・ディルポ首相(62)らが空港で出迎えるなど国賓級の熱烈な歓迎を受けた。首相は「パンダは中国の宝物で、(貸与は)政治的に大きな意味がある」と語り、中国との結びつきが強まると喜んだ。

 習氏、FTA締結呼び掛け

 ベルギーは中国にとってEU内で6番目の貿易相手国で、2012年の輸出入総額は約212億ユーロ(約3兆円)にのぼる。

 ただ、パンダの受け入れ先をめぐって、南部のパイリダエザ自然公園に決まったことに、国内最古の歴史を誇るアントワープ動物園がある北部が猛反発。ベルギーではもともと、フランス語圏の南部とオランダ語圏の北部が対立しており、険悪な関係を一層悪化させたといういわくがある。

 中国は、対米国戦略の一環としても、EUとの経済関係強化を重視しており、習主席は自由貿易協定(FTA)の締結などに意欲を燃やしている。習主席は「広範なイメージを描くべきで、それがひいては中国だけでなく欧州の利益につながる」と語り、締結を呼び掛けた。

 ただ、中国とEUの間では、ワインや太陽電池パネルの貿易をめぐる対立が勃発しており、交渉は一筋縄ではいきそうもない。

 「パンダの貸与は、ベルギーだけでなく、EU全体との関係緊密化を図る中国の意思を示している」

 ベルギー公共テレビは、習主席の視察をこう解説し、その狙いを見透かした。(SANKEI EXPRESS

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