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拉致協議継続で日朝一致 北の射撃訓練に韓国軍応射
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韓国・延坪(ヨンピョン)島 日本と北朝鮮は3月31日、外務省局長級による2日目の公式政府間協議を北京の在中国日本大使館で行い、日本人拉致問題について協議を継続することで一致した。日本側は、拉致被害者の安否などの再調査や被害者全員の早期帰国を求めたとみられる。北朝鮮側は拉致問題をめぐる議論を拒絶しなかったが、経済制裁の解除を提起し、植民地時代の「過去の清算」を求めた。
日本側は、3月26日の北朝鮮の中距離弾道ミサイル発射について日朝平壌宣言に違反しているとして厳重抗議した。北朝鮮が3月30日に「新しい形態の核実験も排除しない」とする声明を発表したことには「遺憾だ」として自制を求めた。
協議には日本から伊原純一外務省アジア大洋州局長、北朝鮮から宋日昊(ソン・イルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使が出席した。伊原氏は協議後、拉致問題について記者団に「基本的な考え方について問題提起した」と述べた。
一方、韓国国防省は(3月)31日、韓国が黄海上の軍事境界線と位置づける北方限界線(NLL)付近の北側水域で北朝鮮が(3月)31日、海上射撃訓練を実施したことを明らかにした。
北朝鮮軍は(3月)31日午後0時15分ごろから約3時間、多連装砲など約500発を発射。このうち約100発が韓国側の水域に落下し、韓国軍はK9自走砲で約300発を応射した。
北朝鮮は31日朝、延坪(ヨンピョン)島や白●(=領の頁を羽の旧字体に、ペンニョン)島の北方に射撃区域7カ所を設定したとする訓練計画を韓国に通知し、船舶が近づかないよう要請していた。北朝鮮が訓練計画を事前通知するのは異例。
北朝鮮の通知を受け、韓国軍はNLLの南側を砲撃した場合には強力に対応すると北朝鮮側に通告。F15K戦闘機や艦艇を黄海に投入して警戒監視を強化し、白●(=領の頁を羽の旧字体に)島の住民をシェルターなどに緊急退避させた。
北朝鮮は500発以上の砲弾を発射して朝鮮半島情勢を緊迫化させる一方で、北京で行われた日朝局長級協議では、対話に積極的な姿勢を見せた。日韓関係の悪化をにらみ、日本との交渉を軌道に乗せ、日米韓を引き離そうとする意図がうかがえる。
北朝鮮が“融和的”な態度を見せて行われた協議は韓国でも報じられたが、韓国国内では日本への「疑心」が強まっているとされる。再開した日本との交渉を北朝鮮としては簡単に手放すことはできない。むしろ、韓国の対日不信こそが北朝鮮の狙いで、日韓のさらなる離間を狙い、今後も日本への対話攻勢を強める可能性もある。(北京 山本雄史、ソウル 加藤達也/SANKEI EXPRESS)
≪「一定の手応え」 安否再調査へ全力≫
北朝鮮が「解決済み」としてきた拉致問題を議題にすることを拒否せず、日朝間の公式な「対話」はひとまず継続されることになった。拉致をめぐって日本側は「一定の手応え」を感じ取っているが、北朝鮮側が核・ミサイル問題で強硬路線を崩さないなか、日本が経済制裁カードを切るのも容易ではない。
伊原純一アジア大洋州局長は(3月)31日の協議終了後、記者団に対し「具体的な成果を目指して取り組んでいくことが重要だ」と指摘し、拉致被害者の安否再調査の実現などに引き続き全力を挙げる決意を示した。協議に出席した外務省幹部も「中身の濃い意見交換だった」と強調した。
(3月)31日の協議は日本大使館で、午前10時半から4時間余にわたり断続的に行われた。途中、短時間の休憩をはさんだ際、双方が軽食を取る場面もあり、協議のムードは悪くなかったようだ。
しかし北朝鮮側は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部(東京都千代田区)の土地建物の売却問題を取り上げ「強い懸念」を表明した。北側は総連本部の重要性に触れ「日朝関係に大きな影響を与えるという問題意識」(外務省幹部)に言及したという。日本は司法手続きを進めていることを説明したが、総連本部問題が日朝関係の新たな大きな課題になったのは間違いない。
今回の日朝協議を受け安倍晋三首相は(3月)31日の自民党役員会で「拉致問題をしっかり進めないといけない」と決意を示した。首相は今後も「対話と圧力」で対北朝鮮外交に臨む方針だ。
ただ、拉致問題の進展に向けた青写真は描けそうにない。北朝鮮が2008年8月に約束した拉致被害者の再調査がその後一方的に破棄された経緯からも、北朝鮮の出方は不透明だ。(北京 山本雄史/SANKEI EXPRESS)
≪被害者家族評価「歓迎する」≫
日本と北朝鮮の外務省局長級による公式政府間協議で日本人拉致問題の議論が継続となったことを、拉致被害者の家族は3月31日、「歓迎する」と評価し「みんなが元気なうちに解決しないと意味がない」と一日も早い被害者の救出を願った。
家族会代表で、田口八重子さん=失踪当時(22)=の兄、飯塚繁雄さん(75)は「歓迎する」と述べた。埼玉県内の勤務先で取材に応じた。
拉致問題を「解決済み」としてきた北朝鮮側が議論を拒まなかった点を「何らかの結果につながると感じる。簡単ではないと思うが、よく調べてみたら、まだ日本人がいましたという結果になるのではないか」と推測。「間を置かずに協議を続け、この流れを逃さないよう詰めてもらいたい」と日本政府に求めた。
横田めぐみさん=失踪当時(13)=の母、早紀江さん(78)は自宅がある川崎市内で「(北朝鮮が)ミサイルを発射するなど真意はまだ分からないが、協議を嫌がらないようになったのは今までと変わってきている」と評価。次回協議を「すぐにでもやってほしい。みんなが元気なうちに解決しないと意味がない」と訴えた。
父、滋さん(81)も「一歩前進だ。一日も早く解決してほしい」と今後の協議に期待した。(SANKEI EXPRESS)