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庶民の気分で「新発見」を楽しもう 「のぞいてびっくり江戸絵画-科学の眼、視覚のふしぎ-」

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庶民の気分で「新発見」を楽しもう 「のぞいてびっくり江戸絵画-科学の眼、視覚のふしぎ-」

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「江戸城辺風景図」亜欧堂田善_寛政年間後半~文化年間_東京芸術大学蔵(サントリー美術館提供)  【アートクルーズ】

 西洋科学も笑いと感動のタネ!? 遊び心たっぷりの「のぞいてびっくり江戸絵画-科学の眼、視覚のふしぎ-」が5月11日まで、サントリー美術館(東京都港区赤坂)で開かれている。江戸時代の庶民の気分で、存分に“新発見”を楽しみたい。

 ミクロの世界が彩る

 展示の中で、思わず噴き出してしまったのが、「蚤(のみ)図」(山田訥斎、19世紀)。紙のど真ん中に墨で、でかでかとノミを描いている。生えている体毛の表現もリアル。江戸時代の庶民は「な、なんだコリャ?」と、度肝を抜かれたにちがいない。

 紙には畳の目の跡が残っていて、「宴会などの席画として即興で描いたものだろう」(池田芙美学芸員)という。「知らねぇのか、ノミってぇのはな…」顕微鏡を通してノミの実像を知っている描き手が、酔漢たちに蘊蓄(うんちく)を傾ける姿が浮かんでくる。

 16世紀にオランダで発明された顕微鏡は、18世紀半ばに日本に伝わり、蘭学者らに利用される一方で、庶民にも“ミクロの世界”の新しい発見を広めた。古河藩の土井利位(としつら)が観察、記録した雪の結晶「雪華(せっか)」は、着物の柄になったり、「雪華文蒔絵印籠(せっかもんまきえいんろう)」(重要文化財、原羊遊斎、1832~40年)にデザインされたりと、江戸期のアートを彩る。

 16世紀末に発明された望遠鏡も約20年後には徳川家康に献上された。その後日本製も作られ、お金を取ってのぞかせる見せ物がはやる。

 同じ見せ物でまたまた笑ってしまったのが、「新卑姑射文庫 三編」(高力猿候庵原画/小田切春江写)。7枚の鏡を並べ、見物客が前に立つ。鏡は凹面や凸面で、見物客の顔は小さくなったり、大きくなったり、長くなったり…。

 筆者は「自分自身の顔を、お金を出して見ることさえおかしいのに、みんなから笑いものにされている」と、皮肉たっぷりだ。

 ファン垂涎の名画も

 企画展は、(1)〈遠近法〉との出会い(2)〈鳥の眼〉を得た絵師たち(3)〈顕微鏡〉でのぞくミクロの世界(4)〈博物学〉で観察する(5)〈光〉と〈影〉を描く-に分かれる。

 筒状の鏡に映すと正常な形に見える一種のだまし絵「さや絵」や、障子の裏から光を当てて動物などを表現する「影絵」、人間を折り重ねて顔を描く「寄せ絵」なども紹介。

 15世紀のルネサンスに編み出された遠近法「透視図法」を取り入れた秋田蘭画の傑作「不忍池図」(重要文化財、小田野直武、1770年代、秋田県立近代美術館)や「江戸城辺風景図」(亜欧堂田善)、「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」(歌川広重、1857年)など日本絵画ファン垂涎(すいぜん)の名画も展示。GWに家族連れで堪能できる企画になっている。(原圭介/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 「のぞいてびっくり江戸絵画-科学の眼、視覚のふしぎ-」は5月11日まで、サントリー美術館(港区赤坂9の7の4東京ミッドタウンガレリア3階)。火曜休館だが、4月29日、5月6日は開館。一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。

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