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【相川梨絵のバヌアツ通信】恐れが虜に変わる不思議な島

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【相川梨絵のバヌアツ通信】恐れが虜に変わる不思議な島

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火山の島として有名なアンブレム島。マルム火山の火口に近づこうとするニュージーランドの冒険カメラマンは、地元バヌアツでも有名になりました=2013年6月9日、バヌアツ(相川梨絵さん提供)  女性は触れてはダメ

 バヌアツ人が恐れる島、アンブレム島。ここはブラックマジックで有名な島です。

 バヌアツでは大きな村の入り口に「タムタム」という背の高いトーテムポールのような柱が立っています。村の守り神的な意味もありますが、中がくり抜かれていて、お祭りの時などのドラムの役割も果たします。ポートビラの街中にも立っていて、バヌアツではそこら辺で見かけるとてもメジャーなものです。

 このタムタムを作ることを許されているのが、アンブレム島だけなのです。どの島のどの村のタムタムもアンブレム産です。そして、バヌアツ人は、自分の村以外のタムタムに決して触れようとしません。特に女性は決してタムタムに触れてはいけない、それは、タブーな事。もし犯してしまったら、タムタムの呪いで自分に悪い事が起こると本気で信じています。

 また、平和なバヌアツに暴動が起きた事がありました。その原因がブラックマジック。タンナ島出身の男性が、奥さんの具合が悪くなり、アンブレム島出身の男性に相談したそうです。外科的手術が施され、結果、奥さんは亡くなってしまいました。しかし、旦那さんはアンブレムのブラックマジックで殺されたと憤慨し、アンブレム出身者が集まる集落に火を放ったのです。そこから部族間同士の抗争に発展してしまいました。

 笑い話もあります。初めてバヌアツを訪れた時、日本での仕事を聞かれ、「ニュースや天気予報を読んでいるよ」と話すと、「お前は天気を操れるのか!!」と。どうやら、ここでは、天気は卑弥呼的な人がブラックマジックで操作するようです(笑)。

 バヌアツ人は純粋すぎて、いいのだか悪いのだか。でも、そこがバヌアツ人の憎めないところなのです。

 溶岩湖に近づく男たち

 一方、アンブレムは、火山の島としても有名です。観光地として人気のタンナ島のヤスール火山は、どっかーんの噴火型。対して、こちらのマルム火山は、まるで地獄のかまのようなぐつぐつ型。火口の中で不気味に赤く輝く溶岩が煮えたっているかのようにうごめきます。まさに人々が恐れるアンブレムのイメージにぴったり。世界でも4つしかない溶岩湖と呼ばれるそうです。この溶岩湖に魅せられたクレージーなやつらがいます。ニュージーランド人の、ジェフ、ブレッド、ネルソンの3人。彼らは1つのチームで世界中の危険な場所にチャレンジしている冒険カメラマンです。

 アンブレムのマルム火山の頂上にテントを張り、そこから火口にロープをたらして極限まで降り、溶岩に近づいていきます。その限界は上から400メートル。火口に顔を出してのぞき込むと熱くて数十秒しかもたないそうです。宇宙服のような防火服を着て、顔にはガスマスク。なぜにそこまでして、溶岩に近づきたいのか私には分かりませんが、彼らは挑戦し続けるのです。

 地形的にマルム火山はガスがたまりやすいそうで、霧が晴れて、400メートル下まで挑戦できるのは、数日ありません。豪雨の中テントで晴れるのを待ってチャンスがきたらチャレンジ。そんなガッツと熱い情熱の末、15年かけてやっとマルム火山400メートル下山に成功しました。これ以降、マルム火山といえば、彼ら。日本からの撮影隊に同行したり、今年はマルム火山でアメリカのコマーシャルの撮影もあるそうです。

 人々が恐れ、そして、虜(とりこ)になるアンブレム。魅惑の島でしょ。(バヌアツ親善大使、フリーアナウンサー 相川梨絵/SANKEI EXPRESS

 ■あいかわ・りえ 1977年東京生まれ、茨城育ち。横浜国立大学卒業後、2000年共同テレビ入社。フジテレビアナウンス室に出向し、フジテレビアナウンサーとして「笑っていいとも!」をはじめバラエティー、情報番組などに出演。06年、フリーに。12年、結婚とともにバヌアツ共和国に移住、「バヌアツ親善大使」に任命される。13年、「いばらき大使」を委嘱。ダブル大使としてバヌアツと茨城の懸け橋となるべく奮闘中。

 ブログ「相川梨絵のシャララーン劇場」でもバヌアツ生活を公開中。ameblo.jp/aikawa-rie/

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