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上演重ねるほど芳醇な物語へと育つ可能性 ミュージカル「レディ・ベス」
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円形舞台は運命を巡らせるように時折回転。ベス(花總まり、左)を見守る母アン・ブーリン(和音美桜)=2014年4月8日(東宝提供)
16世紀のイギリス黄金期を築いた女王エリザベス1世にも、ベスと呼ばれ、波乱の境遇の中、恋に心を揺らした時代があったとしたら-。誰もが知る名君を題材に、「エリザベート」のヒットメーカーコンビ、ミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)が新たな青春ミュージカルを生んだ。「レディ・ベス」(小池修一郎演出)の世界初演が、帝国劇場(東京)で5月24日まで行われている。
円形舞台など、ステージには天文時計をかたどった、大きな「円」が2つ。天命に従い円の内にとどまるか、円を出て自由に生きるか。ベスを乗せ、運命の環が回り出す。
王女でありながら、宗派と母が異なる姉メアリー(吉沢梨絵)から、「不義密通の母の子」とおとしめられるベス(花總まり)。女王になったメアリーが母の血筋であるスペイン王家との関係を強めると、民衆はベスを王にと蜂起。その混乱の中、森で出会った吟遊詩人の青年ロビン(加藤和樹)とベスは恋に落ちる。が、ベスは反乱主導の疑いを着せられロンドン塔に幽閉されてしまう。
家庭教師アスカム(石丸幹二)の教えに知の翼をはためかせ、恋に瞳を潤ませる。絶望のふちに追い詰められても、気高さや芯の強さを保ち前を向くけなげなベスを、花總がかれんに演じている。楽曲は起伏が多彩、聴き応え十分。ただ、ロビンへの恋心をより濃密に描くほうが、ラストのベスの選択のすがすがしさがより際立つのではないか。上演を重ねるほど、芳醇な物語へと育つ可能性を秘める。(津川綾子/SANKEI EXPRESS)