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【欧州サッカー】岡崎 今季13得点 絶好調男の勇気と献身
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ドルトムント戦の前半、ゴールを決めるマインツの岡崎慎司(左)=2014年4月19日、ドイツ・ドルトムント(ゲッティ=共同) 絶好調である。
ドイツのブンデスリーガ、マインツの岡崎慎司(28)が4月19日のドルトムント戦で2点を挙げて今季13得点とし、マンチェスター・ユナイテッドの香川真司(25)がドルトムント時代の2011~12年シーズンに記録した欧州主要1部リーグにおける日本選手最多得点に並んだ。
前半の14分にはペナルティーエリアの外から思い切りよく狙ったミドルシュートが相手DFに当たり、コースが変わってのラッキーゴール。後半8分には相手GKへのバックパスを狙って奪い取り、GKをかわして右足でゴールに流し込んだ。
いずれも美しい展開のゴールとは言い難いところに、岡崎の持ち味がある。1点目はどこからでもゴールを狙う意識の賜(たまもの)であり、2点目は前戦で相手を追い回し、すきあらばいつでもボールの奪取を狙う献身的な守備の意識が生んだものだ。
加えて岡崎には、屈強なDFが固めるゴール前で、わずかな隙間に頭から突っ込んでいける勇気がある。形はどうあれ、結果を強引に伴ってみせるのが、岡崎だ。
勇気と献身。誰かを思いださないか。そう。かつて日本代表やジュビロ磐田で見る者の心を熱くさせたFW、中山雅史(46)の姿だ。
1998年フランスW杯で日本代表初ゴールを挙げ、Jリーグでは4試合連続ハットトリックのギネス記録も持つ。骨折した足でピッチをはいずり回り、転がるボールをヘディングした男。そんな泥臭いプレーが岡崎とも共通し、また岡崎が敬愛して止まぬ先輩でもある。
岡崎は(4月)16日、28歳の誕生日を迎えた。記念日を彼はドイツの日本料理店で、中山とともに祝ったのだという。最高の28歳のスタートをドルトムント戦の2ゴールで切った。目の前には、エースとして臨むブラジルW杯が待っている。
≪左右の「刃」 ゴールハンター生かせるか≫
本場ドイツのスタンドを興奮させている、この泥臭いFWが、ザッケローニ率いる日本代表のエースでもある。
岡崎が日本代表でこれまでに挙げた国際Aマッチの通算得点は38。原博実(はら・ひろみ)・日本サッカー協会専務理事の37点を抜き、歴代3位の記録だ。
上には75点の釜本邦茂(かまもと・くにしげ)、55点の三浦知良(かずよし)の2人がいるだけだ。上位2人の名前の大きさから、岡崎の偉大さも知れようというものだ。
ザッケローニ監督率いるザックジャパンの得点王でもある。4-2で勝った3月のニュージーランド戦でも、岡崎は2得点を挙げた。1点目は岡崎の飛び出しを見逃さなかった香川のロングパスから。2点目は本田圭佑(けいすけ、27)=ACミラン=のヒールパスをワンタッチで決めた。
岡崎はアシストの2人に「僕の動きをよく見てくれた」と感謝したが、岡崎の動き出しが出させたパスともいえる。
日本の得点は、左でごちゃつき、右で決めるパターンが多い。香川や長友佑都(ゆうと、27)=インテル・ミラノ=のドリブルやパス回しに本田が絡んで相手DFを引き付け、その裏に飛び込む岡崎に合わせるというものだ。
4-2-3-1の布陣を本線とするザックジャパンで、岡崎は1トップも試されたが、現在は2列目の右サイドにほぼ固定されている。トップでクサビ役になればゴールに背を向けることになり、裏への飛び出しという岡崎の最大の武器を殺すことになる。
左にテクニシャンが偏った編成も、岡崎への注意を散漫にさせる効果を生んだ。6月のW杯では、このゴールハンターをどう生かすか。そこに日本代表の成否がかかっているといってもいい。
岡崎をゴール前でフリーにするためには、左で香川が相手の視線を引き付けることである。ようやく上り調子の香川が試合勘を完全に取り戻せば、長友とのコンビもあり、左右の刃は脅威となるだろう。
中央に陣取るミランの10番、本田も本調子とは言い難い。セリエAで初得点は挙げたが、左足首を痛めて4月19日のリボルノ戦を欠場した。岡崎との相性がいいだけに、彼の復調も鍵を握る。(EX編集部/撮影:AP、共同、ロイター/SANKEI EXPRESS)