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海面上昇 マイアミビーチ水没の危機
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米フロリダ州マイアミビーチ市 風光明媚(ふうこうめいび)なリゾート地で有名なマイアミビーチがある米フロリダ州南部が、地球温暖化による気候変動の影響で水没の危機に直面していることが4月22日、専門家や自治体関係者らが参加した公聴会で明らかになった。世界資源研究所(WRI)の報告書によると、州南部の周辺海域で海面が急速に上昇。マイアミ市の海抜はわずか1.22メートルなのに、一帯では1870年以降、海面が既に30センチも上昇。2060年までにはさらに23~61センチの上昇が予測されるという。水没で地元経済も大打撃を受けるのは必至で、関係者らは気候変動を食い止めるのが先決と訴えている。
「フロリダ州の南部は、気候変動とそれが沿岸地域に及ぼす脅威の“グラウンド・ゼロ”になっている」
フロリダ州選出のビル・ネルソン民主党上院議員(71)は、今年44周年を迎えた「アースデイ」当日の22日、マイアミビーチの市役所で開かれた上院の特別公聴会でこう述べ、水没の危機の深刻さを訴えた。マイアミビーチ市は海側に突き出した砂州状の土地にあり、マイアミ市とは橋で結ばれている。
実際、マイアミビーチ市のフィリップ・レビーン市長によると、満潮時に冠水した際、膝まで水に漬かりながら、歩いて自宅や会社に向かう人々を見ることがよくあるという。
フロリダアトランティック大学で土木工学を専攻するフレッド・ブロエッシャー助教授も「(水没の危機は)ゆっくり、着実に、そして持続的に忍び寄ってくるが、われわれにはまだ時間が残されている」と呼びかけ、早急な対策が必要との考えを示した。
地元紙マイアミ・ヘラルドやフランス通信(AFP)などによると、フロリダ州の人口は約2000万人で、うち約4分の3がマイアミ市やマイアミ・デイド郡、ブロワード郡など沿岸の南フロリダ都市圏に住んでいる。海面上昇の影響を受ける人口としては世界で4番目に多い。
その影響は極めて甚大だ。ブロワード郡のクリスティン・ジェイコブズ市長はロイター通信に「海面が30センチ上昇すると州南部沿岸地域の不動産(課税ベース)約40億ドル(約4100億円)が、91センチで310億ドル(約3兆1780億円)が悪影響を受ける」と危機感を募らせる。
不動産だけではない。マイアミの観光業界関係者によると、昨年、マイアミ一帯を訪れた観光客は1420万人で、地元に落ちたお金は総額230億ドル(約2兆3580億円)。このまま海面の上昇が続けば観光客も遠のき、観光収入も消えてしまう。
レビーン・マイアミビーチ市長によると、市では10月の満潮時までに、潮の干満による水位差を調整するためのバルブの使用の検討に入ったほか、3億~4億ドル(約300億~400億円)を投じ、塩水をくみ上げるポンプ3台を新設する計画を進めているが、基本、有効な手立てはなさそうだ。
ネルソン議員は「われわれは石灰岩とコキナ(貝殻石灰岩)でできた穴だらけで水が染み込みやすい巨大な基盤の上にいる」と説明。さらに「堤防を築くことも可能だろうが役に立たない」と明言し、フロリダの地下地盤を「スイスチーズのようだ」と表現。「革新的な解決策を編み出す必要がある」と訴えた。
レビーン市長は「(地球温暖化による)気候変動の緩和が最優先だ」と強調するが、そうした論調に無関心な人々も多い。しかしネルソン議員はこう言った。「海面上昇や気候変動(の事実)を否定する人々よ。このフロリダの状況が証拠だ」(SANKEI EXPRESS)