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変幻自在の役作り ライブ感大切に 歌舞伎俳優 片岡愛之助さん

 あるときは名探偵、あるときは天才科学者、またあるときは人気漫画家…。まさに、変幻自在。本業の歌舞伎にとどまらず、ありとあらゆる役を演じこなす。

 昨年(2013年)大ヒットしたテレビドラマ『半沢直樹』(TBS系)では、エリート官僚の黒崎駿一役を好演。主人公と敵対する憎まれ役にもかかわらず、抜群の存在感で一躍、人気者になった。

 「ジャイさん(福沢克雄監督)から『半沢直樹』のお話をいただいたときは、歌舞伎の仕事もあったので連ドラ出演は絶対無理だと思いましたが、それでも『どんな役ですか?』って聞いたら、『いやぁ、ちょっと…』となかなかおっしゃらないんですよ。で、『実はオネエの役なんだけどね…』って(笑)」

 「最初は断ろうかとも思いましたが、僕も40歳を超えたし、役者として勉強のためにチャレンジしてみようかなと…」

 そして、この個性的なオネエキャラの演技が予想をはるかに超える大反響を呼ぶ。「黒崎の存在がなければ、これほどの高視聴率はなかった」と分析する評論家も多い。

 「弟子の片岡愛一郎が女形なので、それを参考にしたり、いわゆるオネエと呼ばれる人たちのしぐさを見たりして、いろいろと研究しましたね。あとは監督と相談しながら役を作りました。あまりやり過ぎても安っぽくなってしまいますので」

 この『半沢直樹』でのイメージがあまりにも強烈だったため、「え? 歌舞伎もやっているんですか?」と“主客転倒”しているファンも多いという。

 「僕はそれでいいと思っているんですよ。ドラマを見て初めて知ったという人も、それをきっかけに歌舞伎の舞台に足を運んでくださる。ありがたいことです。今はパソコンで何でも見られる時代じゃないですか。映画も音楽も演劇も歌舞伎さえも…。でも、それだけでは得られないものがあるんです。舞台と客席の一体感やその場の空気…。そういうのは、実際に会場に足を運ばなければ味わえない。役者とお客さまのキャッチボールやライブ感というのは2Dでは成立しない、3Dならではの良さだと思います」

 そのライブ感の“真骨頂”ともいえるのが、現在公演中の新作コメディー『酒と涙とジキルとハイド』(作・演出=三谷幸喜)だ。

 「まず台本が最高に素晴らしい。読んでいて笑っちゃうし、演じていても楽しいんです。三谷先生はまさに天才ですね。僕も含めて、役者の持っている引き出しを開けるのがすごくうまい。三谷先生が『最近、コメディーらしいものを書いていないので、喜劇中の喜劇を書く』とおっしゃった作品ですから、まさに自信作。ぜひ、劇場に来ていただきたいですね」

 仕事のスケジュールは1年先までビッシリと埋まり、休みは全くない。「だから、これといった趣味もないんですよ。睡眠時間を確保するので精いっぱい」。それでも、「つらいと感じたことは一度もありません」という。

 「いろいろな役をやって、吸収して、演技の幅を広げていく…。今はそんな時期なんだと思っています。僕ら役者は、一生が精進。どこで勉強が終わるというのはありませんから」(文:本間普喜(ひろき)/撮影:フォトグラファー 大石一男/SANKEI EXPRESS

 ■かたおか・あいのすけ 1972年、大阪府堺市生まれ。実家は歌舞伎とは無縁のスクリュー工場で、ダンプカーが出入りしていたことから「危ないし、家に置いたままにするのもかわいそう」という父親の意向で松竹芸能に入る。9歳で第一三世片岡仁左衛門の部屋子となり、『勧進帳』で歌舞伎役者としての初舞台を踏む。19歳で片岡秀太郎の養子となり、六代目片岡愛之助を襲名。歌舞伎のほか、映画、舞台、テレビ、CMなどと活躍の場を広げている。最近の出演作にはテレビドラマ『ガラスの家』(NHK)、『名探偵・神津恭介~影なき女~』(フジテレビ系)など。オンワード樫山の男性スーツブランド「五大陸」アンバサダーをはじめ、CMにも多く出演。恐怖漫画の巨匠、楳図かずおの自叙伝的映画『マザー』(9月公開予定)では、主人公の楳図かずお役を演じる。身長172センチ、血液型はB型。

 【ガイド】

 ■『酒と涙とジキルとハイド』公演日程。<東京公演>4月10~30日=東京芸術劇場プレイハウス。5月4~18日=天王洲銀河劇場。<大阪公演>5月22~25日=シアター。BRAVA!

スタイリスト:手塚陽介

ヘアメーク :山崎潤子

問い合わせ先

五大陸ウェブサイト:www.onward.co.jp/gota iriku/

オンワード樫山 お客様相談室(電)03・5476・5811

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