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経済
ソニー赤字転落 今期も500億円見込み 経営迷走…さらなる改革迫る市場
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ソニーの業績/ソニーの株価(2002年度~2014年度)=2014年5月14日発表、※2014年度は見通し ソニーが5月14日発表した2014年3月期連結決算は最終損益が前期の415億円の黒字から1283億円の赤字に転落した。パソコン「VAIO(バイオ)」事業の売却に伴う特別損失などが響いた。15年3月期も、引き続き約1350億円の構造改革費用を計上するとして、2年連続となる500億円の最終赤字を見込む。
14年3月期の売上高は、円安効果などで前期比14.3%増の7兆7672億円だったが、営業利益は88.3%減の264億円。エレクトロニクス(電機)部門は3年連続の赤字で、テレビ事業は10年連続の赤字となった。
15年3月期は、画像センサー分野の増収やスマートフォン(高機能携帯電話)の販売台数増などで売上高は0.4%増の7兆8000億円、営業利益は5.3倍の1400億円を見込む。一方、構造改革費用はパソコン事業の収束にともなう費用や国内外の本社・販売会社で行う約5000人の人員削減で、2月時点の計画より積み増した。
都内で会見した吉田憲一郎最高財務責任者(CFO)は、「(今期は)構造改革をやりきる年にしたい」と強調した。
≪経営迷走…さらなる改革迫る市場≫
4月中旬、東京・有楽町で映画「アメイジング・スパイダーマン2」のジャパンプレミアが開かれた。制作費は約2億ドル超で、ソニーの映画部門を牽引(けんいん)するシリーズの2作目。会場には出井(いでい)伸之元社長(76)らソニー関係者が詰めかけた。
世界的に注目度の高い作品で、オマージュのように映り込んだのがパソコン「VAIO(バイオ)」。2月に撤退を決めているだけに、ちぐはぐな印象を与えた。
平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は2012年4月の就任以来、「ワン・ソニー」を掲げ、エレクトロニクス(電機)部門と映画・音楽部門などの相乗効果を目指してきた。だが、目立った成果は出せていない。
「経営目標を達成できず、株主ら関係者のご期待にお応えできないことを大変申し訳なく思っている」
5月14日の決算発表会、4月に就任したばかりの吉田憲一郎CFOの第一声は謝罪だった。「13年度(14年3月期)にテレビ事業を黒字化」「14年度(15年3月期)の営業利益率5%以上」。平井社長が就任時に示した経営方針はどれも達成不可能になったからだ。
ソニーの目標未達は今や見慣れた風景だ。今月(5月)1日に13年度の業績予想で3度目の下方修正を行った際も、翌日の株価はわずかに下落しただけ。出井氏がCEOだった03年の「ソニーショック」の際は、業績が想定を下回っただけで市場全体が大きく値を下げたが、投資家は冷めている。
「本腰を入れて電機部門を再建するのか、電機はもうかる事業だけに絞り、映画・音楽などエンターテインメント(娯楽)や金融を柱にしていくのか、経営陣が決断できなかった」。ある社員は迷走の原因を断言する。吉田CFOも「テレビ事業は経営と施策の不安定さが赤字を増幅させていた」と認める。
平井社長就任1年目の12年度(13年3月期)、ソニーは5年ぶりの最終黒字を果たした。ただ、実態は自社ビルの売却などで利益をかさ上げし、電機部門の抜本改革も先送り。パナソニックが津賀一宏社長(57)の下で、不採算事業を洗い出して12年度に7000億円を超える赤字を計上したのとは対照的だ。
ようやく今年2月、パソコン事業撤退やテレビ事業分社化などの構造改革を発表。ハワード・ストリンガー氏らこれまでの経営陣が手をつけられずにいた「聖域」に踏み込んだ。
社内には否定的な意見もあったが、平井社長と(昨年末に最高戦略責任者になった)“参謀役”の吉田氏が「短い期間で決断した」(幹部)という。
吉田氏は社長室長などを経て、インターネット接続事業子会社ソネット社長になっていたのを平井社長が呼び戻した。
4月には社員のアイデアなどを基に新規事業創出に取り組む組織を設置、第1弾として不動産事業に参入する。もっとも、創業者の盛田昭夫氏(1921~99年)の陣頭指揮で始めた金融事業などと比べると力不足は否めない。
「(電機部門が)継続的な黒字体質になるには、もう一段の構造改革で、人員や組織を実力に見合った規模にする必要がある」(モルガン・スタンレーMUFG証券の小野雅弘エグゼクティブディレクター)と市場の視線も厳しい。
ライバルが業績回復を果たす中、取り残されたソニーは輝きを取り戻せるのか。平井社長が22日の経営方針説明会で説得力ある将来像を語ることができるか注目される。(田村龍彦/SANKEI EXPRESS)