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日本人の危機を想起してもらえれば 映画「シークレット・チルドレン」 中島央監督インタビュー
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サングラスがトレードマークの中島央(ひろし)監督の次の構想は、刑事ドラマのコメディー=2014年4月24日、東京都港区新橋(原田史郎撮影) 映画の都、米ハリウッドに活動の拠点を置き、大好きな映画を撮り続けてきた。「『これぞ本物のエンターテインメントだ』とハリウッドに認めさせたいんですよ」。そんな中島央(ひろし)監督(38)の新作は、近未来の先進国Xを舞台に迫害に遭うクローン人間のサバイバルを描いた長編SF「シークレット・チルドレン」。中島監督は「書きためたたくさんの脚本の中でも一番キャッチーな題材だったのがクローン。ちょうど東日本大震災の後でした。クローンの姿を借りて現代の日本人の危機を想起してもらえるように描いたつもりです」と力を込めた。
先進国Xでは、「シークレット・チルドレン」と呼ばれるクローン3万人が人類と共存していた。だが、ブルームクイストが大統領に就任するや状況が一変。クローン廃絶運動に乗り出し、クローンたちは次々と命を落としていく。残されたクローンたちは生き延びて子孫を残そうと、最後の賭けに打って出る。
なぜ中島監督は、欧米人ばかりが登場する本作を、実は現代の日本人へのメッセージとして描いたのだろう。「今の時代をじっくりと考えてほしいんです。例えばサラリーマン。終身雇用が風前のともしびとなり、同僚も、先輩も、後輩もみんながライバルとして狭い社内でサバイバルを展開するようになってしまいました。悪い意味での米国社会がやってきたわけです。弱い人から順番に会社は『はい、さようなら』と。僕だけがビビっているのかな。でも、こうした状況は加速していく気がするんですよ」
では、現代の日本人はどんな手を講ずればいいのだろうか。「登場人物たちのように、理屈抜きに何が何でも生きることだけを考えて生きていくこと。今を必死に生きることで、未来の子供たちの“勝利”につなげること」ときっぱり。それができなければ、自然淘汰されてしまうとさえ思えてくるそうだ。例えば上司に媚びを売ってお中元を出すとか、ガード下の焼き鳥屋で仲のいい同僚たちと会社への不満についてくだを巻くとか、それができるだけでも実は平和な世の中だとの思いを強めている。
日本人が米国をはじめとした“アウェー”で仕事する場合、大切なことは「自分はこれがやりたいんだ」という点を明確にしておくことだそうだ。自分を主張していかないと米国では生き残っていけないなと感じたことが何度かあった。「成田国際空港を一歩でも出たらジャングルと思うこと。米国は野生動物が集う社会だぐらいに思った方がいい。遠慮していたら淘汰されます。文化というものに是非を付けられませんが、その辺は理解しておいて損はありません。理想をいえば、自分が過ごした国の文化的な核を失わずに、米国のカルチャーに適合させて、思ったことを主張していく」。同じ志を持ち、海外での活躍を夢見る後輩たちに伝えたい-。5月10日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:原田史郎
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