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動きたいのに動けない大人の恋 「いろは匂へど」著者 瀧羽麻子さん

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動きたいのに動けない大人の恋 「いろは匂へど」著者 瀧羽麻子さん

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大人の恋物語に挑んだ瀧羽(たきわ)麻子さん。「恋でも趣味でも、勇気を持って一歩を踏み出して」=2014年5月10日、東京都渋谷区(塩塚夢撮影)  【本の話をしよう】

 累計15万部のヒットとなった『うさぎパン』など、若者のかわいらしい恋の描写に定評のある作家、瀧羽(たきわ)麻子さん(32)。新刊『いろは匂へど』では、京都を舞台に、これまでよりちょっと大人な恋物語を紡ぎだした。

 一人でも生きていけると思っていた。なのに-。京都で小さな和食器店を営む30代半ばの独身女性、紫(ゆかり)。ある日、パーティーで不思議な魅力を持つ50歳の草木染め職人・光山(こうざん)と出会う。その大胆で無邪気な魅力に、紫は徐々にひかれていく-。

 『うさぎパン』では高校生、『左京区七夕通東入ル』は京都の大学生の恋愛を。しかし、今回主人公に選んだのは恋に一線を置く30代半ばの大人の女性だ。「私自身も徐々に大人になってきたし、周りにも30代の独身女性ってすごく多い。大人になると、若いときほど簡単に恋に落ちづらくなる。今回の作品の登場人物はほぼ全員大人ですが、こういう状況に置かれたとき、どういうふうに動くか、もしくはこういうふうに動きたいのに、動けないのかを考えてみたかった」

 気持ちを強く揺さぶる人

 光山は“人たらし”。光山の仕事を手伝っているという美女・藤代(ふじよ)いわく、ガールフレンドが何人もいるようだ。経験を重ねたからこそ分かる光山の危険さ。動きたくても動けない、大人の恋ならではのもどかしさを丁寧に描く。「高校生のとき、大人は万能だと思っていた。でも、大人になればなるほど、ままならないことも増えていく。恋愛でも守りに入ってしまって、よほどのことがなければ心は動かない。でも、ひとたび動いたときは、若い頃よりも、純度が高くて強い。それを見つけられるって、幸せなんじゃないかな」

 草木染め職人として天才的な腕を持つ光山。「30代の女性って、すでに自分の世界を確立している。ちょっとやそっとで心動かされないけれど、だからこそ、自分の知らない世界を持っている人には一気に引きつけられる。だから、紫が心引かれる相手は職人にしようと」

 奔放な魅力を持つ光山だが、それだけに敵も多い。「読んだ人から感想をもらうんですが、光山については賛否両論(笑)。でも、可もなく不可もないような人には、30代女子はひかれないと思うんです。自分の気持ちを強く揺さぶる人って、何かしら人の神経を逆なでするようなところがあるはず」

 紫の気持ちを揺さぶる光山。一方で、紫には一途に思いを寄せてくれる店の常連の米国人・ブライアンという存在も。光山を取りまく女性たちも入り交じり、色鮮やかな恋物語が展開する。

 煩わしい、でも世界を輝かせてくる。大人の女性にそんな感情を思い出させてくれる本作。「自分でコントロールできる世界で安定した生活を送るのもいいことだけれど、知らない場所に飛び込むのってすごく自分が広がる。恋でも趣味でも、勇気を持って一歩を踏み出してほしいですね」(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■たきわ・あさこ 1981年、兵庫県生まれ。2004年に京都大学卒業。07年『うさぎパン』で第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞。その他の著書に『株式会社ネバーラ北関東支社』『左京区七夕通東入ル』など。

「いろは匂へど」(瀧羽麻子著/幻冬舎、1500円+税)

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