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“ネット圏外”合宿でスマホ断ち 米国発の「デジタル・デトックス」拡大

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“ネット圏外”合宿でスマホ断ち 米国発の「デジタル・デトックス」拡大

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 米国発の「デジタル・デトックス」という概念が急速に広まり出している。デトックスとは「解毒」という意味で、寝ても覚めてもネットにつながっているような「オンライン人間」が、ネットやスマホから少し離れる習慣(オフライン休暇)を定期的に取り入れ、依存症から脱しようという考えだ。

 カリフォルニア州では、スマホ・ネット断ちを強いる3泊4日のデジタル・デトックス・キャンプが570ドル(約5万8000円)という決して安くはない費用にもかかわらず、大変な人気を呼んでいる。デジタル環境が整い、あふれる情報が万人でシェアされる中、今や逆に「圏外」を買う時代が始まったのかもしれない。

 自然の中で3泊4日

 サンフランシスコから車で2時間ほどかかるカリフォルニア州北部の街、ナバロ。自然豊かな広大な森林が特徴のこの街では昨夏、「キャンプ・グラウンデッド(楽しみを奪われたキャンプ)」と銘打った1週間に及ぶデジタル・デトックス・キャンプが試験的に行われた。参加者はグーグル、フェイスブックなど州内の名だたるIT企業に勤める人たちを中心に数百人に及び、大好評だった。

 このため、再開催を求める声が高まり、今年も6月の週末に3泊4日のキャンプが3回行われた。参加者は各回とも約300人で、定員の関係で希望したにもかかわらず参加できなかった人が多数出たため、9月からも毎月1回、サンフランシスコの公園で実施することになった。

 参加者は森林地帯のキャンプ村に入る前に、主催者にスマホ、パソコン、タブレットなどのデジタル機器を預け、キャンプ中はこれらを使用することが一切禁止される。さらに禁酒禁煙で、仕事や年齢に関する話をすることも禁じられ、名前もキャンプ中だけの仮の名前を使って生活する。時計も使えず、参加者たちはひたすら、たわいもない会話を交わしたり、歌ったり踊ったりしながら過ごす。ネットから離れ、大自然の中でリアルな目の前のことだけに集中する時間を過ごすうちに以前の自分を取り戻していくという趣向だ。

 リアルな出会いに感動

 ロイター通信などによると、キャンプを主催するNPO(民間非営利団体)の責任者、レビ・フェリックスさんは「参加者は皆、『つながり疲れ』した正真正銘のオンライン人間ばかり。キャンプを経て、自分なりの新たな気づき、発見に出合い、改めて生活を見直すきっかけをつかんで帰っていく」と話す。

 6月2回目のキャンプに参加したフェイスブックの女性デザイナーは「メールのチェックもできず、最初は不安だったが、終わってみると実にすがすがしく、精神的にも気持ちが良かった。やはり、人間にとって真の感動とは、リアルな出会いによってこそ起きるものだと気づかされた」と感想を語った。

 キャンプに限らず、デジタル・デトックスが必要だという認識は、米国で急速に浸透している。ホテルのフロントでは、デジタル機器を有料で預かるサービスを始めるところが増えている。また、グーグルやフェイスブックなどでは、自分の発想を大切にさせるため、禅や瞑想の時間を設けて、従業員に「オフラインの時間」を確保させている。ビジネス界でも、いつでもどこでもコンタクトが取れるということは必ずしもメリットではなく、デメリットにもなっているとの認識が広がり始めている。

 「本当に実社会で生きる情報は、流れ出る情報をつかみ取った先にある」(フェリックスさん)。デジタル・デトックスは潮流になってきた。(SANKEI EXPRESS

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