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エボラ急拡大「制御不能」 西アフリカ60カ所 感染者、飛行機移動?

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エボラ急拡大「制御不能」 西アフリカ60カ所 感染者、飛行機移動?

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 致死率が最大90%に達する「エボラ出血熱」の感染が西アフリカで急速に広がり、現地で治療に当たっている国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」は6月23日、感染拡大が「制御不能の状態に陥った」とする声明を発表した。世界保健機関(WHO)によると、今回の流行が始まった3月以降、感染者567人のうち350人が死亡し過去最悪の事態となっている。従来は感染エリアが限定的で封じ込めが可能だったが、今回はすでに60カ所で患者が確認された。ウイルス感染者が航空機で移動し感染を広げている可能性も指摘されており、さらなる拡大が懸念されている。

 首都に近いジャングル

 「人材や物資は感染被害が深刻なギニア、シエラレオネ、リベリアの3カ国に投入しており、もはや新たな感染地域に支援チームを派遣することはできない。限界だ」

 唯一現地で治療活動を行っているMSFの責任者、バート・ヤンセン医師は23日、事態はその対応能力を超えており、感染拡大を食い止められないと訴えた。MSFはこれまでに300人以上を派遣し、約40トンの物資を送り込んで、470人の患者の治療を行ったという。

 MSFのチームは、隔離病棟で患者の治療を行い、液体栄養剤の投与などで死亡率を60%程度に押さえ込んでいる。だが、その感染力は強く、医師らも感染の危険にさらされている。

 米CNNテレビ(いずれも電子版)などによると、これまでのエボラ出血熱の感染はジャングルの奥地といった場所に限られ、大流行に至らなかった。しかし、今回は最初にウイルスが確認された場所が、人口2万人のギニアの首都コナクリに近いジャングルだったことが、事態を深刻化させた。

 コナクリには国際空港もあり、発病するまでに2~21日の潜伏期間があるエボラ出血熱の感染者が気づかないまま、航空機で移動し、他国に感染が広がった可能性が指摘されている。

 葬儀出席でも

 さらに対応の遅れや啓発活動の不足も拡大に拍車をかけた。WHOの専門家、ピエール・フォルメンティ医師は、英紙ガーディアンに「感染が始まったとき、これまで通りと事態を軽く考えていたため、準備が遅れた」と指摘。さらに「4月下旬に、感染が確認された3カ国では患者数が減ったため、チームの気が緩み、(感染の急拡大という)新たな展開を察知できなかった」と悔やんだ。

 また各国政府や指導的立場にある宗教界にも専門家が乏しく、十分な啓発活動が行えなかったことから、エボラで死亡した人の葬儀に出席し、感染した事例も報告されている。

 ワクチン追い付かず

 WHOによると、現時点でエボラ出血熱には確立された治療法やワクチンはない。専門家によると、ウイルスは非常に速いスピードで進化するため、ワクチンの開発が追い付かないという。

 事態を重く見たWHOは、感染拡大が「第2の波に突入した」と判断。7月2、3日に各国の衛生当局による高官協議を開き、現地への医師や専門家の派遣や物資の輸送について検討を開始。これ以上の感染拡大の阻止に全力を挙げる。(SANKEI EXPRESS

 ■エボラ出血熱 1976年にザイール(現コンゴ民主共和国)で初めて確認された急性ウイルス性感染症。コウモリやゴリラ、チンパンジー、ヤマアラシなどの野生動物が感染源とされる。人から人への感染は、血液や汗などの体液を媒介とし、排泄(はいせつ)物や患者の遺体との接触、性交渉でも感染する。発熱や下痢、嘔吐(おうと)といった風邪に似た症状が現れ、進行すると、口腔(こうくう)や鼻腔、皮膚などから出血が起こり、平均10日間で死に至る。致死率は25~90%。初期段階で治療を受ければ、致死率は下がる。

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