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ネイチャーがSTAP論文撤回 発表から5カ月 研究成果白紙

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ネイチャーがSTAP論文撤回 発表から5カ月 研究成果白紙

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STAP(スタップ)細胞検証実験に参加に向けて、理化学研究所に入る小保方晴子(おぼかた・はるこ)氏=2014年7月2日午前10時53分、兵庫県神戸市中央区の理化学研究所・神戸研究所CDB(松永渉平撮影)  新型万能細胞とされるSTAP(スタップ)細胞の論文不正問題で、英科学誌ネイチャーは7月2日、理化学研究所の小保方晴子(おぼかた・はるこ)・研究ユニットリーダー(30)らが執筆した論文2本を取り下げたと発表した。著者による撤回申請を受け決定した。世界的に注目されたSTAP論文は発表から約5カ月で無効となり、研究成果は白紙に戻った。

 取り下げたのはSTAP細胞の性質や作製法を記載し、理研の調査委員会が不正と認定した主要な論文と、細胞の万能性を詳述した補足的な論文の計2本。撤回により細胞が存在する根拠は失われた。

 小保方氏は当初、撤回に反対していたが、理研の勧告を受け5月に補足論文、6月に主要論文の撤回に同意。小保方氏とともに反対していた米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授を含む著者全員が同意し、撤回申請していた。

 STAP論文は小保方氏らが1月末、ネイチャー誌に発表。体の細胞を酸性溶液に浸すだけで万能細胞を作製したとする内容は「生物学の常識を覆す発見」と注目されたが、画像の流用や切り貼りなどの疑いがインターネット上で相次ぎ指摘された。

 理研の調査委は5月、主要論文について万能性の証拠となる細胞の画像を捏造(ねつぞう)、DNA解析画像を改竄(かいざん)とする最終報告を確定し、ネイチャー誌に報告。同誌は編集部独自の調査結果と著者の撤回理由も総合的に検討し、取り下げが妥当と判断した。

 審査体制の見直しも

 ネイチャー誌は、科学界で最も権威ある学術誌として知られるが、不正を見抜けず信頼に傷が付いた形で、審査体制の見直しを迫られそうだ。また、論文の撤回は、論文の執筆にかかわった研究者にとっても信頼性を損なわれる非常に不名誉な事態だ。

 1869年に創刊したネイチャー誌は、自然科学のあらゆる分野の論文を掲載する国際的な学術誌。掲載論文は科学界で最も引用されており、世界をリードする存在だ。重要で革新的な論文を掲載することで知られ、1953年のDNAの二重らせん構造の発見などノーベル賞の対象となった研究も掲載されている。

 世界中から毎週200本の論文が投稿されるが、掲載するのはわずか8%。それだけに審査は厳格と言われ、掲載されれば科学者にとって大きな業績となる。

 だがSTAP論文では審査の不十分さを露呈した。理研が改竄(かいざん)と認定したDNA解析画像の切り張りはネイチャー誌の投稿規定に違反していたが、審査で見抜けなかった。この画像は加工の痕跡が分かりにくいが、同様の論文を2012年に審査したライバルの米科学誌サイエンスは「不適切」として却下している。

 ネイチャー誌は昨年(2013年)春、第三者が結果を再現できない生命科学の論文を減らすための対策を発表。結果の信頼性や透明性を向上させるため実験の生データの提供を著者に推奨するなどとしていたが、STAP論文では有効に機能しなかった。

 消えない汚点

 論文の撤回は研究者にとっても汚点となる。論文に誤りがあった場合、著者は撤回か修正を申請するが、撤回は結論に影響する重大な誤りがあり、著者が自ら論文の成果を無効と通知することを指す。世界中から先行研究として認められなくなる上、論文データベースに撤回の事実が記されて後々まで残る。

 修正の場合はデータの正誤表が付記されるものの、論文の成果は維持されるため、著者は可能な限り修正で済ませようとする傾向がある。STAP論文で捏造(ねつぞう)とされた画像について、小保方氏は単なる取り違えと主張。修正を求めたが、認められなかった。

 ≪小保方氏が出勤 検証実験参加≫

 STAP(スタップ)細胞の論文不正問題で、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子(おぼかた・はるこ)研究ユニットリーダーは7月2日、細胞の存否を確認する検証実験に参加するため、センターに出勤した。

 小保方氏はこの日午前11時前、報道陣約50人が待ち構える中、タクシーに乗って1人で出勤した。タクシーから降りた小保方氏は髪を一つに束ね、七分丈の白色シャツにすそを絞ったズボン、赤と白のスニーカーという、これまでの記者会見とは一転した服装だった。

 報道陣には一言も発さず、緑と茶色のバッグ2つを下げ、しっかりとした足取りで建物の中に入った。

 小保方氏が実験に参加する期間は11月末までの5カ月間。初日の1日は体調不良を理由に出勤しなかった。

 代理人を務める三木秀夫弁護士によると、小保方氏は検証実験への参加を前に電話で三木弁護士に対し「しっかりやっていきます」「細胞証明の第一歩となるのでがんばります」と意気込みを語ったという。(SANKEI EXPRESS

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