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【STAP細胞】「アドバイザー」強調 擁護と釈明 理研・笹井氏会見

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【STAP細胞】「アドバイザー」強調 擁護と釈明 理研・笹井氏会見

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2014年1月、STAP細胞の研究を発表する理化学研究所の小保方晴子(おぼかた・はるこ)氏。右は笹井芳樹・副センター長=兵庫県神戸市中央区の理化学研究所(共同)  新型万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の論文不正問題をめぐり、共著者で理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長の笹井芳樹氏(52)は4月16日の記者会見で、捏造(ねつぞう)や改竄(かいざん)を防げなかったことへの釈明に追われた。だが、新たに判明した事実はほとんどなく、謎は残った。

 「他の研究者も確認」

 STAP細胞の有無について、笹井氏は「論文の信頼性が損なわれた以上、再現や検証が必要であり、検証すべき仮説とするべきだ」とした。だが、その一方で「有望な仮説で、現時点では説得力のある反証はない」と、従来通り存在を肯定する姿勢も示した。

 その根拠として、STAP細胞は(1)胚性幹細胞(ES細胞)などと異なる性質を持つ(2)万能細胞特有の遺伝子が働く細胞塊が形成される(3)受精卵由来の細胞とSTAP細胞由来の細胞が混じり合うキメラマウスを作製できる-などを挙げた。

 作製した細胞はES細胞と比べて小さく、遺伝子解析の結果も異なる。ES細胞にはある増殖能力がなく「ES細胞の混入ではないか」との指摘を否定した。また、細胞塊の形成については形成過程を自動撮影した動画があり「人為的操作は不可能」と主張した。

 また、キメラマウスの作製は若山照彦山梨大教授が行ったことも挙げ、「いずれも小保方氏以外の研究者も確認しているため客観性がある」と強調。「これらを説明するには、STAP現象が現時点で最も有力な仮説だ」と言い切った。

 実験ノート見ず

 論文執筆における自身の役割については「投稿直前の約2カ月強、論文の最終段階で関与した。執筆アドバイザーのはずだったが、共著者の強い要請で著者に変わった」と説明。関与は限定的と強調した。

 その上で、捏造、改竄とされた論文画像の問題に気付けなかったことに対して「共著者の一人として見抜けなかったことは慚愧(ざんき)の念に堪えない」と謝罪した。

 その理由について「自身は論文の最終段階で関わったため、すでに多くのデータが実験ごとの図表にまとまっていた」と振り返り、「生データや実験ノートを見る機会がなく、他のデータとの整合性が高く問題点を見つけるのは困難だった」と釈明した。

 また、報道陣から「実験ノートを見るべきではなかったか」と質問されると、「小保方氏は独立した研究室の長であり、部下ではないためノートを見るのは難しかった」と弁明。ただ、「もし見ていたら、より深いレベルの指導ができただろうと思う」と苦渋の表情を浮かべた。

 真相解明は進展せず

 STAP細胞がさまざまな細胞に分化できる重要な証拠となる画像が、小保方氏の博士論文の関連画像から流用された問題については「小保方氏から、真正画像があったが取り違えたと聞いている」と説明。

 ただ、小保方氏の不服申立書によると、真正画像の撮影は2012年6月で、論文がネイチャー誌に投稿された12年4月より後。この矛盾を指摘されると笹井氏は「私が論文に関与する以前の話なので、どこでどう撮影されたのか分からない」と釈明した。

 また、小保方氏が理研に不服を申し立てたことについては「このような事態を避けてあげられなかったアドバイザーとしての足りなさをわびたい」と語った。

 しかし、争点である故意や悪意の存在については「私には分からない」と述べるにとどまり、笹井氏から新事実や未発表データの公開はなく、STAP細胞をめぐる不正問題の解明には程遠い会見となった。(SANKEI EXPRESS

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