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TPP事務協議継続へ 選挙絡み米慎重 「年内は動かず」

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TPP事務協議継続へ 選挙絡み米慎重 「年内は動かず」

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カナダ・首都オタワでTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉団を激励する自民党の西川公也(こうや)TPP対策委員長(左端)=2014年7月12日(共同)  ≪閣僚会合日程示せず≫

 日米など12カ国が参加してカナダのオタワで開催された環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉官会合が7月12日、閉幕した。鶴岡公二(こうじ)首席交渉官は閉幕後の記者会見で「首席交渉官でやるべき作業が少なからず残されている」と述べ、首席交渉官らで事務協議を継続する考えを示した。12カ国は閣僚会合の開催日程を示せず、合意実現にはなお時間がかかる。

 今回会合の議長国を務めたカナダ政府は12日、ウェブサイト上で「次回会合の日程や場所は決まっておらず、現時点で閣僚会合は予定されていない」との声明を発表した。

 12カ国が目指す早期妥結に向けては、閣僚会合で各国の意見の隔たりが残る関税協議のほか、知的財産や環境などの難航分野で政治決着を図ることが不可欠だ。継続する事務レベル協議で、いかに論点を絞り込む作業を加速し、閣僚会合の開催にこぎ着けられるかが交渉前進の鍵を握る。

 鶴岡氏は当初、今回の交渉官会合を「年末に向けてTPPをまとめるための重要な節目」と位置付けていた。しかし12日の記者会見では閣僚会合の開催時期に関し「今後の日程までここで見通すことはできない」と慎重な姿勢を貫いた。その上で論点の絞り込みに向け、オタワ会合で固まった工程表に基づき作業を進める必要性を強調した。

 (7月)3日から始まった交渉官会合では、解決が困難とみられていた労働が事実上合意し、食の安全を扱う衛生植物検疫も大幅な進展がみられるなど、分野によって論点を絞り込む作業が進んだ。2国間による関税の個別協議も一部で前進した。鶴岡氏は「所期の目的を達成することには成功した」と述べ、一定の成果があったと評価した。

 日本が関税を守りたいコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、サトウキビなど甘味資源作物の重要農産物関税では、米国以外で日本に輸出拡大を狙う国とも協議。日米が合意した場合の対応でも意見を交わした。

 12カ国は分野ごとに事務協議を順次再開する見通し。日米は、大江博首席交渉官代理らが出席し、14日から米ワシントンで関税協議を実施する。

 ≪選挙絡み米慎重 「年内は動かず」≫

 カナダのオタワで7月12日閉幕したTPP首席交渉官会合は仕切り直しとなり、各国の政治日程をにらみながら引き続き妥結への道筋を探る。交渉が勢いを失い漂流する危うさをはらみつつ、年内の大筋合意を見据えた綱渡りが続きそうだ。

 関税・知財で難航

 「今後の日程調整に入れれば成果になる」と開幕前に語っていた鶴岡公二首席交渉官は、12日の記者会見で、閣僚会合を招集する段階に達せず難航したことを認めた。一定の進展はあったが、関税自由化や知的財産など困難な分野で議論を収束できなかったためだ。

 先月(6月)、バラク・オバマ米大統領(52)がニュージーランドのジョン・キー首相(52)と打ち出した「11月までに一定の合意文書を得る」との目標を、他の参加国は注目した。両首脳は「9月のニュージーランドの総選挙後に閣僚会合を開き、11月に首脳が議論して大筋合意する」(米政府筋)日程で一致したとみられる。

 だが、今回の会合では「日程の話はしなかった」(鶴岡氏)。議長国カナダは日本と同じく重要農産品を抱えており、エド・ファスト国際貿易相は11日に「妥結への日程は設けない」と発言。米国が描く年内妥結へのシナリオに同調せず、交渉を急がない姿勢を示した。日程調整にも各国の思惑が絡み合う。

 「一任は来年以降」

 交渉を主導するはずの米国内の動きは鈍い。11月に中間選挙を控えた米議会では、自由貿易拡大に反対する与党民主党議員を中心に、選挙を意識したTPP慎重論が広がっている。

 TPPを締結すれば、自国製品を優先購入する「バイ・アメリカン条項」が撤廃され「国内の雇用が失われる」との反発が噴出。イスラム法に基づく厳罰を導入したブルネイを「人権侵害だ」として交渉から外すべきだとの主張も出ている。

 議会動向に詳しい米保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所のデレク・シザーズ氏は「TPPで議会が年内に動くことはない」と断言する。妥結に必要とされる交渉一任の権限を、オバマ政権が得られるのは来年以降との見立てだ。

 日米による2国間協議が停滞し、他の参加国が様子見を決め込んでいることも交渉全体の遅れを招いている。進展があった4月の日米首脳会談後に「日本に対し関税維持を認めた」として米農業団体が激しく反発。米側は歩み寄ってきた主張を白紙に戻すなど、態度を一時硬化させた。

 「首脳同士が約束したことを守るのが信義だ」と自民党の西川公也(こうや)TPP対策委員長(71)は強調。15日にはマイケル・フロマン米通商代表と会談し米国内の抵抗を抑え込むよう求めると息巻くが、日米協議を「秋までにまとめるのは困難」(交渉筋)で出口は見えないままだ。(共同/SANKEI EXPRESS

 【TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)関連の今後の主要日程】

2014年

  7月14~18日 日米の事務レベル協議

  9月20日    ニュージーランド総選挙

 11月4日     米中間選挙

 11月10、11日 APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議

2015年

  1月       米新議会招集

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