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APEC貿易相声明 年内に自由貿易圏工程表 中国危機感、日米主導TPPに対抗

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APEC貿易相声明 年内に自由貿易圏工程表 中国危機感、日米主導TPPに対抗

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アジア太平洋地域の自由貿易圏=2014年5月18日現在、※FTAAP(アジア太平洋経済協力会議)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)  中国の青島で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合は5月18日、域内の自由貿易の進展を目指すアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向けた工程表を年内に策定することを盛り込んだ声明を採択し、閉幕した。

 議長の中国は貿易圏を実現する目標時期の設定を目指した。だが会合では意見が割れ、声明に盛り込めなかった。中国と参加国のベトナムによる南シナ海での緊張状態が続いているが、経済統合の推進では各国が一致した。工程表は11月に北京で開かれるAPEC首脳会議で報告する。

 FTAAPは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などの経済連携交渉を土台として、APECに参加する国などを包括する枠組み。中国は日米主導のTPP交渉を牽制(けんせい)し、FTAAPの構築の必要性を強調していた。

 閉幕後、中国の高虎城商務相(62)は共同記者会見で「首脳会合への成功への道のりを築けた」と強調した。茂木(もてぎ)敏充経済産業相(58)は記者団に「アジア太平洋地域の自由貿易体制の推進に向けて大きな一歩になった」と評価する一方、TPPなどの交渉を進めることが「FTAAPの実現につながる」と既存の交渉を優先すべきだとの考えを示した。

 マイケル・フロマン米通商代表(51)は会見でTPP交渉について「高いレベルの結果を得たい」と主張。シンガポールで19日から開かれる閣僚会合に向け意欲を示した。

 採択された声明は、インフラ開発で質を高めていくため、途上国の能力を向上させる取り組みを奨励。女性の経済進出は将来への投資であることを再確認した。

 ≪中国危機感、日米主導TPPに対抗≫

 5月18日に閉幕したAPECの貿易相会合は、TPP交渉を促進させたい日本や米国と、将来のより広域なFTAAPの実現を掲げて牽制する中国との間で、激しい攻防が繰り広げられた。

 日本や米国は、現在進んでいる経済連携交渉を着実に進展させ、高いレベルの貿易自由化を達成したい考えだ。中国は自由貿易を推進する原則を示してはいるが、急激な自由化が自国産業に及ぼす影響を警戒している。

 日本はTPP交渉のほか、中国も参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や、日中韓の自由貿易協定(FTA)など、FTAAPの土台となる交渉の早期妥結を目指している。茂木(もてぎ)敏充経済産業相は会合終了後、FTAAPよりも「こうしたさまざまな地域貿易協定をしっかり進める」ことに力点を置く姿勢をあらためて示した。

 今年のAPEC会合の議長国を務める中国は、FTAAPの目標時期を声明に盛り込むことを提案。11月に北京で開く首脳会議に向けた成果づくりを狙った。FTAAPの早期実現を目指すというより、日米に対抗して存在感を示そうとした。ただ、多くの出席者は目標時期を設定することに賛同せず、かなわなかった。

 中国はTPP交渉に参加しておらず、TPPをFTAAP実現の道のりの一つにすぎないと強調する。TPPが米国主導の「中国外し」につながりかねないと懸念するためだ。高虎城商務相は共同記者会見で、TPPなど個別の交渉が「多角的貿易体制の足を引っ張るべきではない」とくぎを刺した。

 中国では「TPP交渉に参加しなければ、世界の貿易ルール作りが中国抜きで進んでしまう」(政府系研究者)との危機感も高い。中国高官はTPPに対して「私たちは開かれた態度だ」と度々言及し、交渉参加の可能性も示唆してきた。

 ただ中国は依然として規制でがんじがらめになっており、市場開放で打撃を受ける国有企業などの抵抗も強いとされる。「現状ではとてもTPP交渉に参加する状態ではない」(日本の研究者)との見方が一般的だ。巨大な経済規模を持ちながらも先進国と同じ土俵では渡り合えないジレンマに陥っている。(共同/SANKEI EXPRESS

 ■APEC貿易相会合 アジア太平洋経済協力会議(APEC)を構成する日本や米国、ロシア、中国など21の国・地域の貿易や通商担当の閣僚らが参加する。首脳会議に向けた主要会合の一つで、定期的に開かれる。成果を声明として採択する。透明で公正な貿易・投資環境づくりや、地域経済統合の議論を推進していくことが主な狙い。(共同)

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