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政治
TPP閣僚会合 日米の「誤算」鮮明 成長戦略に痛手
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≪「大筋合意」持ち越し、4月にヤマ場≫
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は2月25日、難航分野の対立が最後まで解けず、「大筋合意」を断念して閉幕した。農産物と自動車の関税撤廃で対立する日米協議の決着は4月下旬の首脳会談に持ち越され、TPP交渉全体も同時期にヤマ場を迎える。
参加12カ国は交渉を継続し、閉幕後に発表した共同声明に「最終的な協定に向けて前進した」と明記した。次回の閣僚会合は5月開催で調整を続けるが、声明には盛り込まなかった。日米首脳会談が物別れに終われば交渉は一気に推進力を失う。
次回閣僚会合は、5月17~18日に中国・青島で行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合の前後に開く方向で調整している。開催地は青島の近隣を含めて検討されそうだ。
4月には場所は未定だが首席交渉官会合を開く予定となっている。
甘利明(あまり・あきら)TPP担当相(64)は共同記者会見で「日米が妥結することが重要だ」と述べ、協議の前進に意欲を示した。
ただ、今回の会合では関税をめぐる日米対立のほか、知的財産や国有企業改革でも米国と新興国の間で意見の隔たりが埋まらず、早期妥結は見通せない。ニュージーランドのティム・グローサー貿易相は記者会見で「妥結に近づいたが物品市場アクセスが残っている」と述べ、関税協議が最大の障壁になっていると指摘した。
12カ国は共同声明で「幾つかの論点が残っているが、課題を解決する道筋を付けた」と閣僚会合の成果を評価した。関税撤廃を扱う「物品市場アクセス」でも幅広い2国間協議の結果として「進展させた」と強調し、できるだけ早期に高い水準での貿易自由化を実現するとの決意をあらためて示した。(共同/SANKEI EXPRESS (動画))
≪日米の「誤算」鮮明 成長戦略に痛手≫
2月25日に閉幕したTPP交渉の閣僚会合は交渉を主導するはずの日米の「誤算」を鮮明にした。このまま交渉がいたずらに長期化する漂流状態となれば、他の交渉参加国から両国の責任論が浮上しかねない。安倍晋三政権の成長戦略にも痛手となる恐れが大きい。
「妥結に近づいたが、関税撤廃を扱う物品市場アクセスが残っている」。ニュージーランドのグローサー貿易相はこの日の閣僚会合後の記者会見で関税協議が最大の難問との認識を示した。甘利(あまり)TPP担当相も「交渉参加12カ国で経済の占める割合が大きい日米が妥結することが重要だ」と強調した。
今会合で合意に至らなかった最大の要因は関税協議での日米の根深い対立だ。
日本の誤算は米国から「本音」が最後まで引き出せなかったことにある。
農産品重要5分野の関税の扱いをめぐって、日本側は「米国は交渉をまとめなければならないタイムリミットになれば、本当に日本に売り込みたいモノでの譲歩を求めてくるだろう」と想定し、これに応じる譲歩案を検討していた。
ところが、今会合直前の(2月)20日まで都内で開かれた日米の事務協議では、米国がほぼ全貿易品目の関税撤廃という原則論を撤回せず、日本は米国に「本気で交渉をまとめるつもりがあるのか」(交渉筋)という疑心暗鬼を抱えたまま今会合に突入したのが実情だ。
一方、米国は今会合の直前、新興国との対立点の調整に注力。「日本包囲網」を敷くことで日本に大幅譲歩を迫る狙いがあったとみられるが、日本の反応を読み間違った側面は否めない。日米の反目に他の参加国からは「日米が交渉を引っ張るはずじゃなかったのか」との失望感も広がるが、安倍政権にとってもTPPは成長戦略の大きな柱の一つ。交渉の失敗は「経済政策『アベノミクス』に期待し、日本買いを進めてきた海外投資家からの評価はがた落ちになる」(経済官庁幹部)恐れもはらむ。今後は、4月下旬に予定される日米首脳会談で交渉を再び軌道にのせることができるかどうかが大きな鍵を握ることになる。(シンガポール 吉村英輝、会田聡/SANKEI EXPRESS (動画))
・最終的な協定に向けて前進した
・幾つかの論点が残っているが、包括的でバランスの取れた成果に向け、課題を解決するための道筋を付けた
・広範な2国間会合を通じ、市場アクセスを進展させた
・目標の達成に向け、できるだけ早期に結論を得るため努力