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台湾 中国との対話で浮上した思惑

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台湾 中国との対話で浮上した思惑

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中国・江蘇省南京市(省都)  【国際情勢分析】

 台湾で対中国政策を主管する行政院大陸委員会の王郁●(=王へんに奇、おう・いくき)主任委員(44)が2月11日、初めて中国を訪れ、江蘇省南京市で、中国国務院台湾事務弁公室の張志軍(ちょう・しぐん)主任(いずれも閣僚級)との公式会談を行った。1949年の中台分断後初の主管官庁トップ同士による直接交流で、王氏は「両岸(中台)関係は新たな章に入った」と意義を強調。今後当局間の直接交流の常態化が予想されるが、将来の「台湾統一」をめざす中国が、台湾の馬英九政権に対し「政治対話」進展を求めて加えてゆく圧力の前で、中国からは経済的うまみをひきだしつつも、政治的には一線を画したい台湾側の微妙なかじ取りの行方が注目されている。

 「中華民国」への言及

 「国父・孫中山(孫文(そん・ぶん))先生が創建されたアジア初の民主共和国-中華民国はすでに103年を迎えた」

 公式会談翌日の12日、南京市内で中台がともに「国父」とする孫文(1866~1925年)の陵墓「中山陵(ちゅうざんりょう)」を参拝した際、王氏はこう語った。11日の会談で王氏と張氏は互いに「主任」「主委」(主任委員)と官職の肩書で呼び合ったが、「中華民国」は伏せられ、王氏の参拝身分も単に「大陸委員会主任委員」だったことから、王氏の「中華民国」への言及は台湾では大きく取り上げられた。

 「中台の対等な立場が会談の前提であることを、野党をはじめ台湾社会向けに強くアピールしたかったのだろう」と台湾の識者は分析する。

 王氏は祭文の中に「宝島台湾」「正視現実」などの言葉もちりばめた。

 第二次大戦後の国共内戦の結果、49年の中華人民共和国樹立をもって「中華民国は滅亡した」とする中国側を刺激しかねない場面でもあったが、会談の席上以外の発言のためか中国側は問題視しなかった。

 事実、台湾では独立志向の強い最大野党、民主進歩党の反応も比較的穏やかだった。今会談を「準政治対話」とし、台湾側が求めていた中国当局に台湾人が拘束された場合の「領事面会権」などで具体的進展がなかったと指摘する一方、「両岸当局関係の正常化は民進党政権時以来の主張」とし「双方が対等な立場と尊厳を守り対話のメカニズムを構築してゆくことで合意したことは評価する」と前向きに受け止めた。

 「活路外交」支える前提

 「もはや両岸関係は後戻りはできない。政権奪還を狙う民進党も中国との対話は重視せざるをえない」と台湾の与党・中国国民党の幹部は指摘する。事実、民進党では台湾独立を掲げる党綱領をはじめ、対中政策の見直しが急務となっている。

 2008年の馬英九政権発足後、台湾は中台間の自由貿易協定に相当する経済協力枠組み協定(ECFA)を10年に締結するなど、経済を軸に対中関係の改善を進めてきた。現在台湾の貿易総額トップは対中国で、中国で働く「台商」(台湾人ビジネスマン)は100万人以上、人的往来も年間800万人にのぼるとされる。

 中国との関係改善を進める一方で台湾は「活路外交」を掲げ、日本と11年に投資取り決め、13年には尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題の絡む海域での漁業取り決めを締結。13年、ニュージーランドやシンガポールとも自由貿易協定に相当する経済協定を結んだ。

 「中国大陸との良好な関係が無用の障害(中国による干渉)を生じさせなかった」と国民党幹部。今後、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加盟をめざす台湾にとって、中国との安定した関係は「不可欠だ」という。

 対等な関係構築に自信

 「それゆえに台湾が中国大陸にのみ込まれるという危惧は短絡的だ。むしろ今後は中国大陸にこそ変化が求められてゆく」と先の国民党幹部は指摘する。

 王氏は12日、南京大学の講演で、民主主義という台湾の「核心的価値観」を誇ったが、大陸委員会によると台湾の住民2300万人のうち85%が「現状維持」を望んでいるとされる。「中台接近の結果、多様な価値観が存在する台湾の自由な社会や民主主義が中国大陸に与える影響は小さくない」と国民党幹部。「大陸側は、選挙による政権交代も考慮して台湾と向き合わねばならず、台湾の統治権などでも一定程度の理解を示さざるを得なくなるはず」と、より対等な関係が構築されてゆくことに自信と期待をにじませていた。(台北支局 吉村剛史(たけし)/SANKEI EXPRESS (動画))

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