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娯楽帝国 買収拒否も諦めず メディア王の野望 ワーナーに狙い
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“メディア王”と呼ばれる米国のルパート・マードック氏(83)が、巨大な“エンターテインメント(娯楽)帝国”の建設に動き出した。自ら率いるメディアグループ、21世紀フォックスが同業のタイム・ワーナーに対し総額800億ドル(約8兆1000億円)で買収を提案したが、タイム側はこれを拒否したと両社が7月16日、明らかにした。しかし、米メディアは一斉に「マードック氏は諦めていない」と報じた。映画「タイタニック」を手がけた20世紀フォックスと、「ハリー・ポッター」シリーズのワーナーブラザーズなど傘下にそれぞれ有力なメディア・娯楽企業を持つ両社の統合というかつてないメディア再編は実現するのか…。
フォックス側が提案した買収案は、ワーナー株主に対しフォックス株と現金を組み合わせ、1株当たり約85ドルを支払う内容。両社トップが6月に会談したが、ワーナーは「独立路線を貫く」として拒否した。フォックスも声明で「現在はワーナー側とどのような協議も行っていない」としている。
米メディアによると、ワーナー側は提示された買収額が低すぎると主張したほか、マードック氏による経営支配に強く反発。フォックスが、米独占禁止法(反トラスト法)違反となるのを防ぐため、ワーナー傘下のCNNテレビの売却を提案したことも不快感を招いたようだ。
だが、ニューヨーク・タイムズは「マードック氏の買収の意思は固く、提案の取り下げに否定的」と報道。ロサンゼルス・タイムズも「フォックスは買収価格を引き上げるだろう」との関係者の見方を伝え、ワーナー傘下のCNNは「簡単には諦めない」と、自ら警戒感をあらわに報じた。
実際、16日のニューヨーク株式市場では、新たな買収提案を見込み、ワーナーの株価は17%も急騰した。
21世紀フォックスは昨年(2013年)6月、マードック氏が築いたニューズ・コーポレーションから、20世紀フォックスやFOXテレビなどの娯楽部門を切り離して発足した。傘下の英日曜紙による前代未聞の政治家や芸能人らの盗聴事件が発覚し、新聞・出版部門との分離を迫られ、帝国は縮小を余儀なくされた。今回の買収提案は娯楽部門になお君臨するマードック氏の反転攻勢ののろしといえる。
米娯楽・メディア業界では、NBCテレビやユニバーサル映画を傘下に持つコムキャストが売上高でトップを走る。2位のディズニーも、「スター・ウォーズ」シリーズを手がけるルーカスフィルムを傘下に収めるなど、買収攻勢で着々と規模を拡大。3位のタイムワーナー、4位の21世紀フォックスは、上位2社に後れを取っている。3、4位連合が実現すれば、年間売上高は580億ドルに達し、ディズニーを抜いて、コムキャストに肩を並べることができる。
ワーナーは、米プロバスケットボール(NBA)など優良なスポーツの放映権も持っており、他のメディアグループにとっては垂涎(すいぜん)の的。コムキャストのほか、米大手通信のAT&Tなども買収を模索したことがある。
数々の買収を手がけてきたマードック氏にとっても、成功すれば最大の案件となる。飽くなき野望を抱くメディア王が諦めるはずがない。(SANKEI EXPRESS)