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死を覚悟した人は、今をしっかりと生きている人 吉永淳、松田美由紀 映画「2つ目の窓」
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母と娘を演じた松田美由紀さん(写真)と吉永淳さん。撮影は生と死を真剣に考える場となった=2014年6月2日、東京都渋谷区(財満朝則撮影) 故郷・奈良県を拠点に日本の古き良き姿を映像作品を通して世界に発信してきた河瀬直美監督(45)は、16歳の少年少女の成長を通して生と死を考える新作「2つ目の窓」の舞台に、奄美大島を選んだ。本作で俳優デビューした村上虹郎(17)とダブル主演を務めたのが気鋭の吉永淳(21)だ。「私らしさを役の中に必死に息づかせようとする河瀬監督の意をくんで、ひとりの人間としてまっすぐ役に向き合いました。できることはすべて出し切りました」と振り返り、胸を張った。
奄美大島で暮らす高校生の界人(村上)は、父と別れ、現在は恋人もいる母親の岬(渡辺真起子)を快く思わない。一方、同級生の杏子(吉永)も、島民から「ユタ神様」と慕われる母親、イサ(松田美由紀)にある矛盾を感じていた。なぜ神様が医師から余命宣告を受けるのか。いらだちを募らせた2人は…。
自身のルーツが奄美大島にあることを知った河瀬監督は、現地へ足を運び、太古から神、自然、人間が共存してきた姿にすっかり魅せられ、作品化を決意したという。
撮影では「自然の脅威を十分に味わいました」と吉永。台風が通過した前後の荒波の中、200メートル沖まで泳ぎ、水深3~4メートルで裸で泳ぐシーンを4日間かけて撮影した。制服を着て泳ぐ同様のシーンもさらに4日間撮った。「制服に重りをつけて体が浮かないようにしたので、本当におぼれそうになりました」
当然ながら生と死を考えざるを得なかった。「死を覚悟した人は、今をしっかりと生きている人ではないかと思えてきました。実は監督の後ろ姿にもそれが感じ取れたんです」。若い吉永は、多くの課題が与えられる今を、むしろ楽しめるぐらいの気持ちで過ごしたいそうだ。
一方、演技で試行錯誤を重ねる吉永を間近で見てきた松田は「淳ちゃんは本当に苦労してましたね」と振り返り、経験豊富な先輩女優としてクリアすべき課題をこう指摘してみせた。「思い切って“いい子ちゃん”になることを捨て去り、飾らない生身の自分に近づけること。それができなければ、杏子という人物像には到底近づけません」
松田の目には、吉永がとても礼儀正しいお嬢さんに見えた。きっと両親がよほどしつけに厳しかったのだろう。何でも「きちんとやらなきゃ」と張り切る吉永の姿には好感が持てる。ただ、役者が演技に臨む場合、そんな姿勢が邪魔にもなるというのだ。実際、松田は撮影で“いい子ちゃん”になる癖を「ひっぺがす」のにとても苦労したそうで、「例えば『つうか』とか、『マジうぜ-』と話す若者たちのように、淳ちゃんにも年相応の本当の姿だってあるはずなんですよね」と苦笑いを浮かべた。
死期を悟ったイサは病院から自宅へ戻り、残り少ない日々を夫の徹(杉本哲太)と杏子と静かに過ごす道を選んだが、松田はイサの死生観に心を重ねることができた。「もし伝説の姨捨山のような山があれば、年老いた私をそこに捨ててほしい。家族と一人ずつ30分ほど話をするの。内容は悩みとか、私の貯金とか、いろんなことね。そして、静かに死んでいく。形を変えたイサの最期のシーンみたいでしょ? 私も病院でチューブにつながれたまま生涯を終えたくありません」
撮影後、松田は「今日という日は1日しかない」と肝に銘じ、どうやって1日を費やそうかと感じながら生きたいとの思いを強めたそうだ。7月26日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:財満朝則、大西史朗/SANKEI EXPRESS)
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