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経済
【取材最前線】文系社長の執念
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世界の重電大手によって繰り広げられた仏アルストムのエネルギー部門の買収争奪戦。米ゼネラル・エレクトリック(GE)の勝利で幕を閉じたが、三菱重工業が独シーメンスとの共闘という形で参加し存在感を見せた。20年近く続いた「売上高3兆円の壁」を越えようと、宮永俊一社長の下、規模拡大に突き進む三菱重工だが、真のグローバルプレーヤーに向けて険しい道のりが待つ。
「提案が不採用となり、残念」。6月下旬の株主総会で、宮永社長は淡々とアルストム争奪戦を振り返った。
昨年(2013年)4月に41年ぶりの文系出身者として社長に就任。旧来の「自前主義」を脱し、米エンジン大手プラット・アンド・ホイットニーのガスタービン事業や、デンマークの風力発電大手ベスタスなど、次々とM&A(企業の合併・買収)を進めてきた。
そんな宮永氏にとっても、アルストムは過去にない規模の案件。フランスに飛び、大統領を訪問、シーメンス首脳と英語の記者会見も行った。
当初の提案は、31億ユーロ(約4280億円)を投じて3つの合弁会社をつくり、それぞれ20~40%の株式を取得する内容。巨額の投資額に加え、少数出資にとどめるのも、「50.01%にこだわり、主導権を握る三菱グループ」(関係者)としては異例のオファーだ。得意の火力発電でさらなる成長を目指す宮永氏の執念を感じさせた。
くしくも41年前の文系出身社長は、“天皇”と呼ばれた牧田与一郎氏。自動車部門を分離して三菱自動車を設立し米クライスラーとの提携をまとめるなど豪腕を発揮した。宮永氏は物腰柔らかだが、攻めの姿勢は通じる。社員は「文系社長の時に三菱重工は大きな転換がある」と解説する。
敗れたとはいえ、得たものもある。三菱重工の参画で、GEも譲歩を余儀なくされ、アルストムとの統合効果の一部をそぐことに成功した。国内各社はこれまで事業強化のためにM&Aを仕掛けてきたが、今後、欧米勢との競争で勝ち残るには、ライバルの独走を阻止する買収も避けられない。
伝統の「ものづくり」を守りながら、M&Aを駆使し欧米勢と肩を並べる企業に脱皮できるか。三菱重工の動向は、世界的な重電業界再編にも影響を与えそうだ。(田村龍彦/SANKEI EXPRESS)