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経済
【春闘】集中回答 ベア最高水準1950円 脱デフレ 安倍政権に「模範解答」
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各社の春闘回答をホワイトボードに書き出す金属労協の担当者=2014年3月12日午後、東京都中央区日本橋(栗橋隆悦撮影) 2014年春闘は3月12日、主要企業の集中回答日を迎えた。政府が日本経済のデフレ脱却に向けて賃上げを強く迫ったことに呼応し、焦点だったベースアップ(ベア)に相当する賃金改善は高水準の妥結が相次いだ。一時金は業績回復を反映しトヨタ自動車やホンダ、日産自動車などが労働組合の要求に満額回答した。
機械や金属などの中堅企業でも賃上げ実施が目立った。今後は中小企業や非正規社員にどれだけ波及し、4月の消費税増税に伴う景気失速を回避できるかが焦点だ。
連合によると、この日に経営側から回答を引き出したのは43労組で、ベアの平均額は1950円となり01年以降で最高額。
春闘相場への影響力が大きいトヨタのベアは月額2700円、日立製作所やパナソニックなど電機大手6社は2000円で決着。いずれも6年ぶりのベア実施で、満額回答ではないものの、現行の要求方式になってからの最高額となった。一律のベアを見送ったスズキ、ダイハツ工業も、組合員平均800円分の賃上げ資金を用意し、若手らに振り向ける。
甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相(64)は「中小企業や非正規雇用で働く方々を含め、賃上げの動きが広がっていくことを強く期待したい」と表明した。
経団連の米倉弘昌会長(76)は12日、名古屋市内で記者会見し「非常に多くの企業が賃金改善の要求にさまざまな形で対応している」と評価した。連合の神津里季生事務局長は東京都内で「後続の中小企業などの労組が、格差是正に向けた回答を引き出していけるようにしたい」と述べた。
新日鉄住金などの鉄鋼3社と三菱重工業は、いずれも2年分で2000円(単年で実質1000円)の賃金改善を実施する。大手スーパー、イトーヨーカ堂のベアは2031円。家具量販店のニトリホールディングスのベアは2173円で、パートの時給も上げる。王将フードサービスは一律1万円のベアを含む計1万7008円の賃上げをする。NTTグループ主要8社は平均で1600円の賃金改善を実施する。
≪脱デフレ 安倍政権に「模範解答」≫
「社会的責任」が、2014年春闘で労使双方を突き動かすキーワードだった。連合は3月12日、この日の集中回答日に43労組が回答を引き出し、ベアの平均額は01年以降で最高額となる1950円だったと発表した。大手企業によるベア復活の舞台裏には、企業の国際競争力を維持しながら、安倍晋三政権から課せられた「社会的責任」の“模範解答”を探る苦肉の交渉劇があった。
14年3月期に2兆4000億円の営業利益を見込むトヨタ自動車の労使交渉は、例年以上に重責を担った。ベアでは日産自動車が満額回答を決める一方、15年4月からの増税が決まっている軽自動車のスズキは、鈴木修会長兼社長が「賃上げなんか考える暇もない」との考えを示し、妥結直前まで「ゼロ回答」で調整した。
そうした中、トヨタが示した「ベア2700円」は4000円の要求額を下回り、日産より低く、連合が求めた「1%以上のベア」にも満たない。しかし、この数字には大きな意味がある。
トヨタが満額近くで着地すれば、他業界が追随できないばかりか、2次、3次の下請け企業が置き去りになる恐れがある。一方で、他業界に見劣りする額では「内部留保をため込み、相場を引き下げているとの批判を受けかねない」(業界関係者)。ベア2700円は、定期昇給分7300円を合わせると、21年ぶりに1万円に乗る。「ギリギリの着地点」(宮崎直樹専務役員)だった。
自動車業界の交渉が難航する中、今春闘の相場を引っ張ったのは、業績が回復軌道に乗り始めた電機業界だった。大手6社は現行の要求方式になった1998年以降で最高額の2000円のベアを回答。鉄鋼や造船・重機などベアに慎重だった他業界の背中を押した。
経営再建中のシャープやパイオニアの労組が統一闘争から離脱する中、日立製作所やパナソニックなど6社は統一のベア回答にこぎ着けた。
当初、日立や三菱電機などが高水準のベアに前向きだったのに対し、構造改革中の富士通やNECなどは消極的だった。ある大手の経営幹部は「合わせるにしても1500円が限度」と本音を漏らした。
それでも、「日本経済がいい方向に行くよう貢献したい」(日立製作所の御手洗(みたらい)尚樹執行役常務)という政権へのアピールが交渉の原動力となる。労組側もデフレ脱却に向けた「社会的責任」を強調し、過去最高水準でゴールを目指した。
製造業の賃上げは流通、外食にも波及効果をもたらし始めている。「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは12日、優秀な人材を確保する狙いで、一律1万円のベアを含む計1万7008円の賃上げを発表した。
ただ、経営側からは「賃上げは企業活動で決まるもの」(電機大手首脳)「政府に非協力的とまで言われるのは筋違いだ」(自動車大手幹部)といった恨み節も聞かれる。日本企業は、ベア実施に伴うコスト増と向き合い、厳しいグローバル競争に挑む。(SANKEI EXPRESS)