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【花緑の「世界はまるで落語」】(28) 今日は誕生日、だから母の日
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この赤ちゃん、誰でしょう?正解は僕!_8カ月ころ、母との一枚です。第2の母の日に、母への感謝を込めて=1972年4月(柳家花緑さん提供) 本日8月2日は何を隠そう私、柳家花緑の誕生日です!(まぁ、隠さず言いましたが)。おかげさまで43歳。44年目の夏です。
暑さにももういい加減慣れましたが、やはり春や秋の一瞬だけ涼しさを感じさせてくれる時期が最高です! でも夏も好きなんですね。夏は自分の季節だという印象を持っているくらいです。その一方で子供のころは誕生日が夏休み中だと友達が祝ってくれないと悲しみに暮れておりました。それが今では、「これはこれで真夏のバースデーも乙なものだね?」と根拠のない合点をして、毎年この日を迎えております。
ここ数年、誕生日は寄席に出演しており、おかげさまで今年も新宿末廣亭の夜の部のトリを10日まで務めております。今日(8月)2日は土曜日ですのでお客さまがたくさんお越しいただけるのではないかと期待をしております。でも決して期待を大きくはしません。外すと大きな落胆に変わりますから。だから少~しだけ期待しているわけです。
この日は毎年、寄席が終わると楽屋口で出待ちをしてくれるファンの方々がお祝いをしてくれます。ありがたいなぁと思っています。数年前には高座へ出た途端に「おめでとう-!」とお客さまから声を掛けていただき、拍手をおくっていただいたこともありました。
10人の弟子たちもお祝いをしてくれます。私一人を笑わせようと弟子10人でコントのような映像を撮ってきて、そのDVDをケーキと花束と一緒にくれるのです。それを自宅リビングでみんなでゲラゲラ笑って見るのが今のところ恒例となっています。今年はどうなるか分かりませんが、8月は僕にとってそんな季節なんです。
でも僕には、「理想の誕生日」というものがあります。それは、誕生日こそ「第2の母の日」だという考え方です。母の日は毎年5月と決まっておりますが、自分の生まれた日はお母さんが一番頑張った、一番大変だった日にほかなりません。
その母にお礼を言う日、母を思い感謝する日にしたい。もちろん、直接会って「ありがとう」を言うのもいいでしょう。一緒に食事なんかをするのもいいでしょう。でも中には「仕事が忙しくて会えない」「遠くにいる」「既に亡くなっている」…いろいろあると思います。だから、母への感謝を一番に感じてみる日。そういう発想はどうでしょうか?
生きていて、自分にとって嫌なことや悪いことがさまざま起こるのが人生。たくさんある人生の問題は、実は「感謝」というキーワードを日常に取り込めば大概、解決してしまいます。「感謝」というフィルターを付けると、それまで色あせて見えていた物ごとが、もっと興味の対象になります。
物ごとが「当たり前」に思えてきたとき、要求が多くなり、文句をたくさん言って、イライラする。そんなときはだいたい「感謝」を忘れているものです。
そしてその「感謝」の根本は、親への気持ちだと僕は思います。産んでくれたことへの感謝の気持ちが根本にあればこそ、すべてのひとときが「当たり前」から「ありがたさ」に変わるのだと思います。
おかげさまで今もこうして好きな落語をしゃべって僕は生きています。
すべては産んでくれた母のおかげです。ありがとうございます!(落語家 柳家花緑/SANKEI EXPRESS)